楽観論の封じ込めが奏功した中山義隆陣営 石垣市長選を振り返る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
多数の支持者で埋まった中山義隆氏(手前中央)の総決起大会。1週間ほど前に開いた集会では、想定の半数しか集まらず中山陣営は引き締めを図った=2月20日、石垣市大川

 【石垣】任期満了に伴う石垣市長選(2月27日投開票)は、現職の中山義隆氏(54)が、新人で前市議の砥板(といた)芳行氏(52)を破り4選を果たした。石垣市長選史上初となる保革合同候補となった砥板氏に対し、中山氏は自公の推薦を受けながら従来通りの選挙戦を展開した。昨年末から約2カ月に及んだ両陣営の選挙戦を振り返る。(西銘研志郎)

 市長選告示を間近に控えた2月中旬。中山氏の姿は市内のホテルにあった。支援団体主催の集会。出席者は、想定の半数程度しか集まらなかった。壇上で支持を訴える中山氏は、焦りからか涙を流し出す。そして突然頭を床に付けるよう土下座をし、支持を乞うた。

 中山氏は、3期12年の実績を前面に打ち出し、新型コロナウイルスの影響で疲弊した市経済の回復を訴えた。経済団体などから50超の推薦状を受け、その姿は連日、地元新聞の紙面を飾った。

 「あれだけ記事が出れば緩みも出る。みんな安心して『今回は選挙に行かなくても中山が勝つ』と思っていた」

 楽観論が漂う中、中山陣営は支持者の引き締めを図る。県内大手企業幹部が市内の事業者を熱心に回り、自民党大物国会議員も来島。公明党の市議は、支持者に何度も期日前投票を呼び掛けた。

 その結果、告示日の総決起大会には、砥板氏がその数日前に開いた総決起大会の2~3倍とみられる人が足を運んだ。過去最多となった期日前投票でも、票を積み上げた。それでも陣営は、警戒を緩めず、支援団体への集票の徹底を続けた。

 結局、期日前投票で票を固めた“貯金”で中山氏が勝利を収めた。当選直後、「これまでの選挙で一番厳しかった」と語り、動きの読めない保革合同候補との戦いを振り返った。だが、一夜明けた当選者インタビューでは「実質的には『保守』対『革新』の図式になった」と冷静に分析。“保守離れ”を防ぎきったという自信が垣間見えた。