軍港訓練の是非、影を落としたウクライナ…那覇市議会「2つの意見書」が招く懸念


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飛来した米軍のCH53E大型輸送ヘリに乗り込む武装した米兵=2月12日、那覇軍港(ジャン松元撮影)

 那覇市議会で、那覇軍港での米軍機使用訓練に反対する意見書と、「非戦闘員避難」訓練を容認する意見書の二つが可決された。異なる議会意思が同時に示された背景には、自民や中立会派に「ロシアがウクライナに侵攻し、台湾有事の懸念が高まる中、非戦闘員避難訓練を否定できない」との認識が広がったことがある。だが、国際情勢の不安定化を理由に訓練強化への反対姿勢が控えられる議論に、識者は「少しずつ崩されて何でも認めることになりかねない」と懸念した。

 与党が提案した意見書は「5・15メモに記載されている『港湾施設および貯油所』との主目的に沿って、今後、軍用機の離着陸や訓練を一切行わないこと」として、訓練使用に抗議した。野党の公明会派も「今回の訓練は主目的から外れる」として賛成に回った。

 那覇市議会では昨年11月に、那覇軍港への米軍機飛来中止などを求める意見書を全会一致で可決している。だが今回、自民は与党案と別に、訓練を容認した上で他の訓練適地がないか調査することなどを求める独自の意見書案を提案。自民案に賛成した市議たちは、ウクライナ侵攻を念頭に「状況が変化している」と強調した。

 討論で共産の湧川朝渉氏は「(昨年11月の)全会一致の意見書を踏みにじっている」と厳しく批判した。

 沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「中国はウクライナ侵攻に対する世界の反発を見て、簡単に台湾を占領できるとは思っていないだろう。米軍としては台湾有事の危機感をあおって、訓練の正当性を県民に示す意図があるだろう」と指摘する。

 市議会の意見書が二つに割れた結果について「米軍の宣伝の効果が出ている。訓練を容認することでかえって緊張を高める恐れもある。台湾を軍事力で守るという方向にどんどん進めば、基地のある沖縄は狙われる」と懸念した。
 (伊佐尚記)