生活保護受給者の通院交通費、沖縄市の不支給処分を県が取り消し


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 国の通知で定められている生活保護受給者の通院のための移送費(交通費)を支給しないのは違法だとして、沖縄市の40代女性が市に支給を求めた訴訟を巡り、審査請求を受けた県は10日までに、市側の対応は不当だとして不支給処分を取り消す裁決を出した。昨年11月30日付。裁決を受け、市側は今年2月、女性に移送費を支給した。

 訴状などによると、女性は2016年から生活保護を受給。19年7月に複数の医療機関への通院のための移送費を申請した。市福祉事務所は20年1月、女性の友人に申請の却下を口頭で伝えた。

 女性側は同年4月、行政不服審査制度に基づき、県へ審査請求。同年12月には那覇地裁に提訴した。支給を受け、女性側は訴えを取り下げた。

 裁決書は、移送費の給付が必要かどうかの医師の意見が不明瞭な状態で却下を決めたなどとし、市側の手続きに不備があったと指摘。口頭で却下処分を伝えた点についても適法ではないとした。

 沖縄市の担当者は「裁決を真摯(しんし)に受け止める」と述べた。女性側代理人の大井琢弁護士は「移送費は医療へのアクセスの保障に関わる重要なもので、認められたことは喜ばしく思う。他にも同様のケースがないか懸念がある。全てで正常に運用してほしい」と求めた。