地域の歴史、残したい 比嘉璃子(那覇・南部班)


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written by 比嘉璃子(那覇・南部班)

 年明けに地元の戦争遺構を取材した。那覇市田原の田原公園にある、旧日本海軍・南西諸島海軍航空隊巌部隊の拠点だった「ことぶき山壕」だ。

 小学5年生の時、学校の平和学習で入壕することになるまで、ことぶき山壕の存在は知らなかった。学校で学ぶ沖縄戦は、南部戦線で住民が巻き添えになった話が中心だった。小禄にも戦争があったと知り、衝撃を受けた。

小禄学校給食センター側に面する、ことぶき山壕への入り口=1月、那覇市田原の田原公園

 2007年ごろ、壕は崩落の危険があるとして平和学習に利用できなくなった。5年生の時、体調を崩して入壕できなかったことが今も心残りだ。

 その後も祖母から沖縄戦の体験談を聞くことはあったが、地元で何があったのかは聞き出せなかった。祖母は昨年亡くなった。もっと話を聞けばよかった。

 壕の閉鎖から約15年が過ぎた。巖部隊は大部分が戦死し、証言はほとんど残っていない。地元住民の記憶が頼りだが、高齢化で証言者は減っていく。地元で戦争があったことも、そのうち忘れ去られてしまうのではないか。

 生まれ育った地域を知ることは、自分を知ることにもつながる。日々の取材に追われてばかりだが、沖縄戦に限らず、地域に眠る歴史、消えかかっている歴史を文字に残したい。そのために、記者3年目は取材力や表現の技術を高めたい。

(糸満市、南風原町、粟国村、渡名喜村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。