公益追求が商売の軸に 歴史作家の河合敦さんが語る「渋沢栄一の生き方」 名護・北部法人会講演


社会
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「読書で自尊心を高め、改革を進めた」と渋沢栄一の生き方について説明する河合敦さん=10日、名護市のホテルゆがふいんおきなわ

 【名護】北部法人会の地域社会貢献活動特別講演会が10日、名護市宮里のホテルゆがふいんおきなわで開かれた。歴史作家の河合敦さんが「渋沢栄一から学ぶ現代の生き方」と題して講演した。市内の企業関係者など約50人が参加。河合さんは「自分の利益だけではなく、公益も図る『国利民福』を渋沢栄一は常に考えていた」と述べ、社会貢献を大切にした渋沢氏の生き方を参考にすることを呼び掛けた。

 江戸幕府の第15代将軍徳川慶喜に仕え、幕末に欧州各地を歴訪するなどして海外の商工業を学んだ渋沢氏は、大蔵省・民部省を経て実業家に転身。銀行や保険会社、ホテル、海運業など約500社の設立や経営に参加し「日本資本主義の父」と呼ばれている。

 河合さんは渋沢氏が起業や経営の際に(1)その事業は果たして成立するのか(2)個人だけでなく国家社会にも利する事業なのか(3)その企業は時機に適合しているか(4)事業成立後に経営者に適当な人物はいるか―の4項目を重要視していたと紹介。「『論語と算盤(そろばん)』。競争しながら道徳を守るという、かけ離れたものを一つにすることを自身の商売で大切にしていた」と説明した。

講演に聞き入る企業関係者ら=10日、名護市宮里のホテルゆがふいんおきなわ

 公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め事業を推進させるという「合本主義」という信念の下、渋沢氏が資本を個人に集めるのではなく、より良い社会の実現のために公職を退いた後も晩年まで尽力したことを説明。「地方の再生にも力を尽くした。やり始めたことは最後までやり遂げるという方針で経営や社会奉仕活動に従事した」と話した。

 河合氏は参加者に対し「渋沢栄一は『もうけのことばかり考えていたら岩崎弥太郎や三井財閥に負けなかった』と子どもに言い残している。『大金持ちになるより社会万人の利益のために生きる方が有意義だ』と語った渋沢栄一の生き方を参考にしていただけたら」と述べた。

(松堂秀樹)