復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉3月25日「『組踊』を重要無形文化財に」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 

 1972年3月25日の琉球新報1面トップは、「『組踊』を重要無形文化財に/芸術性認められる/文化庁に答申、玉陵など9件も指定」との縦見出しで、文化財保護審議会が沖縄の伝統組踊保存会を重要無形文化財保持団体として指定することを文化庁に答申したとの記事を掲載している。「護佐丸敵討」を演じる真境名由康氏の写真を大きく扱い報じている。

 組踊の記事にも劣らない大きさで「『尖閣』で日米関係にかげり/国民感情を逆なで/外務省、対米非難の声高まる」と横見出しで伝える記事は、牛場信彦駐米大使がグリーン米国務次官補に対し、尖閣諸島の領有権問題で日本政府の立場を支持するよう正式に日本政府として求めたことを伝えている。前日の朝刊では佐藤栄作首相も米政府の姿勢に「不満だ」と見解を示していた。

 記事では「日米間の外交問題として初めて正式に取り上げられた。しかし米政府の〝局外中立〟の堅い態度に対して、佐藤首相、福田外相ら政府首脳の不満といらだちは五月十五日の沖縄返還日が迫るにつれ、つのる一方のようだ」「沖縄返還で、戦後を清算し、新しい友好の時代へとスタートを切るはずの日米関係は、尖閣を〝震源地〟に、再び不安定化のきざしが現れたと心配する空気が内外に生まれてきている」と記している。関連で「尖閣列島は日本の領土/石橋社党書記長語る」との記事も掲載している。

 復帰に伴う米軍基地労働者の給与問題を巡る全軍労の無期限ストの進捗状況も報じている。「いぜん進展せず/全軍労スト打開の日米折衝」との見出しで、先行きが見えない状況だと伝えている。記事中では「防衛施設庁によれば、基地従業員の給与、諸手当て、退職金など一切の経費を最終的に負担しなければならない米軍側が『財源難』を理由に、依然として堅い態度を取り続けているためだという」と背景も紹介している。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。