沖縄市長選投開票まで1カ月 市街地活性化策は?基地問題への対応は? 立候補予定者に聞いた


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【左から】桑江 朝千夫氏、森山 政和氏

 【沖縄】4月24日投開票の沖縄市長選まで24日で1カ月に迫った。現職で3期目を目指す桑江朝千夫氏(66)=自民推薦=と、新人で前市議の森山政和氏(73)=立民、共産、社民、社大、にぬふぁぶし推薦=が立候補を表明し、一騎打ちとなる見通しだ。両氏に出馬に向けた決意や政策などを聞いた。 (聞き手 島袋良太)


桑江 朝千夫氏 実績生かし経済再生

 ―出馬に向けた決意を。

 「2期の市長職で公約の9割以上を成就した。実現した公約を活用し、コロナ禍で疲弊した経済を立て直す。特に沖縄アリーナとモータースポーツマルチフィールド沖縄の整備、沖縄こどもの国リニューアルで市の人気が上がっている。貧困対策にも力を入れ、貧困の連鎖を断ち切る。火葬場建設も取り組みのスピードを上げる」

 ―経済政策、市街地活性化策は。

 「沖縄アリーナの建設で既に経済効果は出ている。市内に新しくホテルが2棟できた。来年には『パークPFI』方式でプールやラウンジを備えた大型ホテルもできる。コロナ後にアリーナが満席になれば、経済効果はさらに大きくなる。琉球ゴールデンキングスの試合や名だたるアーティストのライブで市外、県外から多くの観客が来る。中心市街地はそこをターゲットに商売していくだろう。胡屋北交差点の改良やパークアベニューの双方向化の計画が進んでいるが、国道拡幅事業も併せ、胡屋地区の「バスタ構想」(ターミナル整備)で商店街をリニューアルする」

 ―基地問題への対応はどうか。

 「米軍牧港補給地区倉庫群の嘉手納弾薬庫内への移設を受け入れた。移設で牧港補給地区が返還されれば、県全体の発展につながる。同時に沖縄市は基地と隣り合わせの街ゆえに、基地の被害を直接受けてきた。だからこそ、どこよりも幸せな街にしなければいけない。受け入れる側も発展しなければならない。経済が疲弊し、基地の被害ばかりで、住みにくくなってはいけない。騒音被害は三連協(沖縄市、嘉手納町、北谷町)で声を一つにし、外来機の訓練を抑制し、飛行ルートを守るよう求めていく。防衛局には、防音工事などの対象地域を広げてもらいたい」

 ―福祉・子育て政策は。

 「貧困対策が上位だ。これまで無料塾や放課後支援などを展開してきた。今後は、例えば若年妊産婦の高校などの卒業支援、あるいは若者の職業訓練や、資格取得によるキャリアアップを支援したい。市民が自ら所得を上げて、自ら生活を向上できる流れを後押ししていきたい」

 ―その他に訴えたいことは。

 「繰り返しになるが、経済をしっかり再生、成長させていく。これが私の役目だ。子どもたち、市民が平等に暮らせる街をつくる。防災・減災の施策もしっかりし、安心な街にする」

 桑江朝千夫(くわえ・さちお) 1956年1月生まれ。沖縄市住吉出身。日本大卒。市議3期、県議2期を経て、2014年4月の市長選で初当選した。現在2期目。

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森山 政和氏 格差のない市へ改革

 ―出馬に向けた決意は。

 「沖縄市の1人当たり所得は41市町村の中で39位と低く、貧困問題が深刻化している。『人にやさしいまちづくり』を掲げ、玉城県政と共に『格差のない沖縄市』を目指す。人づくり、地域づくり、仕事づくりの視点から改革を行う」

 ―経済振興や市街地活性化策は。

 「コザ十字路に路面バスや次世代型路面電車など交通の要所となるターミナルを整備し、周辺を再開発し、にぎわいや企業誘致につなげる。市役所の一部機能も配置し、北部、中部、東部の市民サービス向上を目指す。市の最大の強みであるスポーツ施設を生かし、ホテルや民宿などと連携を図り、雇用拡大につなげる。市役所に『ビジネスサポー卜課』を新設し、第一次産業の振興やICT整備に取り組み、生産性の高い事業を起こす。空き家のリフォーム支援で企業や雇用を増やす」

 ―基地問題への対応は。

 「沖縄市は極東最大の空軍基地・嘉手納飛行場がある。これ以上の基地強化は許されない。米軍牧港補給基地倉庫群の嘉手納弾薬への移設は市議時代から反対してきた。市民生活や地域への影響を注視していく」

 「嘉手納基地のごう音だけでなく、市東部も普天間飛行場のオスプレイの飛行ルート下で騒音が激しくなっている。有機フッ素化合物(PFAS)による水汚染は深刻だ。基地が汚染源だと指摘されているが、日本政府は立ち入り調査もできていない。日米地位協定の抜本改正を政府に求める。名護市辺野古の埋め立てには反対だ」

 ―福祉・子育て政策は。

 「子どもの権利を守る『新こどものまち宣言』をし、『こどものまち基本条例』を制定する。学校給食費を完全無償化し、18歳までの医療費も無償化する。貧困問題も大きな課題だ。ヤングケアラーの把握と支援、進学や就業対策、子育て世帯やひとり親への生活・就労支援を拡充する」

 「性別による賃金格差をなくし、女性が活躍できる沖縄市を目指す。自治会を支援し、地域の見守りや居場所づくり、行事を促進する」

 ―その他、訴えたいことは。

 「個性豊かな人材を育てる教育を目指す。現在の学校現場は個に応じた学習への支援が不十分で格差が生じている。経済的格差で学ぶ機会が奪われている。小中学校で学習支援をしっかり行い、学力の着実な定着を図る。沖縄アリーナの市民による利用を増やす」

 森山政和(もりやま・まさかず) 1948年12月生まれ。宜野座村出身。武蔵野音大卒。沖縄市立越来中校長などを経て2010年から市議3期。出馬に伴い辞職。