隣の建物のコンクリート片落下も…「声がうるさい」移転難航、子どもの居場所「安全な場所を


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コンクリート片が落ちていた場所を指すほのぼのカフェの玉寄文代さん(左)と大城しのぶさん=那覇市曙

 おきなわこども未来ランチサポートなど、民間による生活困窮世帯などへの支援活動が活発化している。しかし実際の活動現場では、運営費や開催場所に困り、活動の継続が難しいところも出ている。現場の厳しい実情や、無理をせず長く続ける“先駆者”の事例を紹介し、市民活動の今後を考える。(黒田華)

 今月5日、那覇市曙の子どもの居場所「ほのぼのカフェ」で子どもたちが遊んでいる最中、玄関先から「ドスン」と大きな音が聞こえた。代表の玉寄文代さんたちが慌てて外に出ると、そばの通路に30センチほどのコンクリート片が落ちていた。老朽化した隣の建物の2階から剥がれ、万一に備えて付けた簡易のひさしを突き破って落下していた。

 「今回は子どもが近くにいなかったが、きっとまた崩れる。安全な場所がほしい」。玉寄さんらの強い願いとは裏腹に先行きは厳しい。落下事故が起きたのは、移転先探しに難航しているさなかのことだったからだ。

 カフェは隔週土曜日にみんなで調理して食卓を囲み、子どもたちは自由に遊ぶ。食材の寄付があったときなどは週に複数回や毎週開催することもある。

 ところが近隣から「子どもの声がうるさい」「居場所ののぼり旗が気になる」など苦情があり、移転先を探して半年以上になる。ここに来る前の場所でも活動を歓迎されず引っ越しを迫られた。困り果てていると、曙1丁目自治会が事務所を1回千円で貸してくれたのが現在の場所だ。アパートに移れば家賃が毎月3万円以上かかり、子どもたちが通いやすい利便性の高い物件も見つからない。

 現在は年間28万円の那覇市の居場所支援事業を柱に寄付の食料で運営する。民間の助成金も申し込んでいるが家賃分には足りず、家賃が対象外のものもある。採択されるかも不明だ。

 利用者には低所得や多子で生活が厳しい世帯、新型コロナ感染などで窮地に陥った世帯もある。地域の民生委員も務める玉寄さんは「おいしい物を食べれば気持ちが楽になり話もしやすい。子どもが居場所に来ていれば様子も分かる。家族とつながる手段としてとても有効」と居場所の効果を痛感している。場所があれば開催回数を増やし高齢者なども含めて地域の交流拠点にできる。「場所を貸してほしい」と訴えた。