「無理せずにお互いさまで」浦添・森の子児童センターが子どもの居場所を続けるための考え方


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この日は近所の弁当屋からたくさんのおにぎりの寄付があった。「どれにする?」と子どもに勧める宮平玲那館長(右)=浦添市の森の子児童センター

 おきなわこども未来ランチサポートなど、民間による生活困窮世帯などへの支援活動が活発化している。しかし実際の活動現場では、運営費や開催場所に困り、活動の継続が難しいところも出ている。現場の厳しい実情や、無理をせず長く続ける“先駆者”の事例を紹介し、市民活動の今後を考える。(黒田華)

 浦添市の森の子児童センターにはたくさんの物が届く。ある日の午後はお弁当屋さんからおにぎり、幼稚園からイチゴのお菓子のおすそ分け。「足を向けて寝られない人がどの方向にもいるから、立って寝るしかない」。運営する一般社団法人まちづくりうらそえの大城喜江子代表は笑う。

 センターでは週に2日、夜間開放して中学生に勉強を教え、小腹を満たすおにぎりなどを出す。2014年、中学生が「高校に行きたいけど、成績が悪くて行けるところがない」と話したのが始まりだ。ボランティアに来た人が勉強を教え、空き缶や段ボールを売って食費を稼いだ。学校や地域から差し入れをしてくれる人も出てきた。

 16年度からは内閣府が行う子供の貧困緊急対策事業を使い、ボランティアに人件費を出し、食事に肉も出せるようになった。しかし事業費は使い方に制約が多く、申請や事後処理に手間がかかる。ボランティアが就職し、大学コンソーシアム沖縄が子どもの居場所に派遣する大学生の謝金を整えたこともあり、19年には事業費を断った。「食事を出すのが目的じゃない。無理せずできることをする原点に戻っただけ」と大城さんは自然体で話す。

 活動の目的は自立した大人になるよう地域で子どもを育てること。学習や食事の支援はその手段だ。地域の人を巻き込めば、その人たちにも役割や生きがいが生まれ、お金がなくても手助けに来て、さまざまな物も持ち寄ってくれる。センターも協力をして「お互いさま」と関係を築くことで、地域全体のつながりと支え合いができていく。

 「自分だけでは何もできない。互いに尊重し、地域や誰かのために一緒に何かしようという意識をどうつくっていけるか。時間はかかるけど、それが動き始めたら本物ね」。大城さんの視線の先に、地域づくりの未来が見えた。