復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉3月29日「衆院予算委〝日米密約〟で紛糾」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 

 1972年3月29日の琉球新報1面トップは、「衆院予算委〝日米密約〟で紛糾/予算案、衆院で足踏み/四党会談も物別れ/政府側、公電の事実認める」との見出しで、社会党の横路孝弘氏が暴露した「沖縄返還での米側負担費用の日本肩代わり密約」で野党が追及している問題での国会の与野党攻防の様子を伝えている。記事では「政府側は、横路氏が入手した外務省公電二通の内容は事実であることは認めたが、最終結論は対米支払い三億二千万ドルであって、米軍用地の復元補償費はこれに含まれず、日本政府による肩代わりなどの密約はないと突っぱねた」と政府姿勢を紹介している。

 横路氏の追及に対して佐藤栄作首相は「私も福田外相も直接にはその公電のいきさつをしらなかったが、政府としての最高責任は逃げるわけにはいかない。政府委員が全く知らないと答えたのは不都合だ」と答弁したとも書かれている。さらには野党追及に佐藤首相が「交渉過程で指摘のようないろいろないきさつがあったことは認める。しかし結論は対米支払い三億二千万ドル、米側の軍用地復元補償費四百万ドルであってなんの密約もない。最終結果で了承願いたい」と押し通す様子も紹介している。

 関連記事で「外務省は苦境に/大失態に幹部の責任問題も」との見出しで、日本側が米側負担費用の肩代わりをする日米交渉を語る外務省極秘文書が公になったことで外務省に震撼が走っている様子を伝えている。記事では「外務省筋も『米国がどのポケットから金を出すかは、日本の関知しないこと』とし、また別の同省筋も返還交渉の過程で対米支払いが3億1600万ドルから3億2千万ドルに400万ドルふえた事実があったことを明らかにした」「したがって形式は何であれ、米国が払う400万ドルを上乗せして3億2000万ドルの数字が協定本文で確定したとみるのが常識的だ」と指摘している。

 さらに外務省の「極秘文書」で最初に国会で取り上げられたものと別の2つの文書の全容も抜粋で紹介している。

 この沖縄返還密約を巡って、琉球新報の東京発の「〝日米密約〟の疑い強い」との解説記事も掲載している。記事では「この対米請求権問題だけなくVOA放送とP3対潜しょう戒機の撤去が取り引きされたことや、極東放送がニクソン大統領の親族との関係で存続を認められた疑いが濃いこと、久保・カーチス取り決めは日米両政府間の確認文書できわめて強い拘束性があること―など、沖縄国会で野党が追及した問題点がすべて『事実』として、この外務省公電は裏づけているようだ」と記している。

 米側の見解を巡って揺れていた尖閣諸島の領有権問題について「〝尖閣〟は日本の領土/自民党外交調査会が見解」との見出しで、与党自民党の立場を紹介している。

 また、当初計画から遅れる形になっている自衛隊の沖縄配備についても、「沖縄への配備計画協議/国防会議参事官会議開く」との見出しで、配備計画の見直し案が議論されていることを伝えている。

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。