「交通戦争」と呼ばれた時代も…急速に車社会になった沖縄で交通遺児を支えて50年 歩みを一冊に


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50周年記念誌「結(ゆい)の心に支えられ」を手にする「県交通遺児育成会」の森田明理事長

 昨年、発足50年を迎えた「県交通遺児育成会」が今年2月、50周年記念誌「結(ゆい)の心に支えられ」を発刊した。交通事故で親を失った子どもの成長を支援する活動のこれまでの歩みや統計資料のほか、支援を受けた交通遺児らの感謝の言葉がつづられている。森田明理事長は「さまざまな支援のおかげで続けることができ、大きな節目を迎えた」と感謝した。

 会の前身である「沖縄交通遺児を励ます会」が発足したのは1971年7月。当時は本土の高度成長の波が沖縄にも押し寄せ、車社会化が進んでいた。県内の車は71年の約13万8千台から5年間で倍以上にふくれあがり、73年には交通事故による死亡者数は現在まで最悪の123人に達した。死者数の急増は「交通戦争」とも表現された。

 発足当初は「交通遺児に愛の手を」と題して、クリスマスプレゼントとして1人20ドルを贈る予定だった。マスコミ各社の協力を得たチャリティーイベントや募金などで資金を集めた。

 79年、県の協力を受けて会は発展解消し、法人化した。名称は「県交通遺児育成会」に変更された。80年から主な事業である奨学金、育成金の給付が始まり、激励金なども含めてこれまで7163人に4億6947万円を贈った。

 企業などからの寄付金は2021年に累計で10億円を超えた。

 支援は交通遺児だけでなく、親が事故で後遺症を負った場合も対象にしている。森田理事長は「支援や交通安全の啓発を通じて住みよいまちづくりに貢献していきたい」と決意を述べた。

 記念誌は千部発刊され、県内教育機関や図書館などに配られた。問い合わせは県交通遺児育成会(電話)098(987)0743。
 (古川峻)