復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉4月3日「極秘文書〝対米密約を浮き彫りに〟/〝肩代わり提供〟を暴露」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年4月3日の琉球新報1面トップは、「復帰準備作業、大幅に遅れる/五割年休が響く/行政府、官公労と話し合いへ」との見出しで、5月15日の復帰までに引き継ぎ作業が間に合わない事態となっていることを伝えている。記事では「準備作業が三月中に完了する予定だった。ところが、これまでにスケジュールどおり完了したのは一件もない」と記している。

 2番手の左肩には「〝対米密約〟を浮き彫りに/極秘文書/〝肩代わり提供〟を暴露/請求権、VOAで全面譲歩」との見出しで、社会党の横路孝弘議員が国会で暴露して追及した外務省機密文書による沖縄返還密約を巡るまとめ記事を掲載している。

 記事では「特に交渉の最終段階で〝ワンパッケージ方式〟として、両国がお互いに譲り合って解決したはずの請求権、那覇空港、VOA放送、極東放送などの重要問題が、実は日本側の全面譲歩であったことが明らかにされたことは、さきの那覇空港へのP3機居残りとあわせ、沖縄現地や本土国民の政府への不信感を一層高めるものといえよう」と記している。さらに「極秘文書によると、実は米側はその財源を日本側に『心配してもらった』(五月二十八日電信案)ことになっている。また同電信案には(中略)「三二〇(三億二千万ドル)がうまくいかず、三一六という端数になっては対外説明がむずかしい」など日米間の〝謀議〟を示す表現もあり、これらを総合すると、米側の支払う四百万ドルは、実は日本が返還にさいして米側に支払う三億二千万ドルの中に含めて日本側が〝肩代わり提供〟するというからくりになっていることは明らかだ」とも指摘している。

 連日続く全軍労の解雇撤回などを求めた無期限ストに関する続報で「解決のメドたたず/全軍労スト」との見出しで、先行きが見通せない状況を伝えている。隣りの記事では「あすから120時間スト/全逓地区本部」との郵政省職員の復帰時における待遇問題についても紹介している。

 ベトナム戦争に関連して「初の戦車戦/南ベ/北軍、ドンハに接近」との見出しで、北ベトナム軍と南ベトナム政府軍との戦車戦が展開している様子をサイゴン発の共同電で伝えている。

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。