復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉4月4日「鹿山の責任を糾弾/久米島・具志川村議会」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年4月4日の琉球新報1面トップは、郵政省職員の全逓労組沖縄地区本部が復帰時の給与保証を要求していることに関連して「百二十時間ストに突入/郵政業務に大打撃」との見出しで報じている。組合側は、郵政省の給与体系に組み込まれると平均27ドルの賃金ダウンになると訴えている。

 2番手の左肩は、沖縄戦の中の久米島で住民が虐殺された事件を巡り当時の鹿山元隊長が「当時の指揮官として最善を尽くした」と発言したことを受けて、地元の議会が抗議声明を出したことなどを大きく伝えている。トップの縦見出しよりも強く横見出しで、「鹿山の責任を糾弾、謝罪要求/久米島・具志川村議会/〝虐殺〟に激しい憤り/全会一致で抗議声明、決議文採択/犠牲者、名誉回復と援護を」と掲載している。

 記事では「声明には戦争中の犠牲はもちろん、戦後四半世紀以上の異民族支配への怒りと、住民虐殺の鹿山元隊長への激しいいきどおりが全文に満ち、押えきれない久米島地元の憤激が脈打っている」と強い語調でこの問題に対する地元の怒りを紹介している。

 1段の記事だが、沖縄返還密約を伝えた外務省機密文書の暴露を巡って、外務省が国家公務員法違反の疑いで警視庁に告発する方針であることを伝える記事「きょうにも告発/機密漏えい事件」を掲載している。

 続くベトナム戦争の関連記事も複数掲載している。一つは「北側、ドンハに迫る/南ベ政府軍、橋破壊して防衛線敷く」との見出しで、政府軍の発表内容を伝えている。また別記事では米軍の動向として「米大統領命令、米空母に出撃態勢」とトンキン湾に第7艦隊の空母4隻を出動させている様子を紹介している。さらに「北側戦車と米戦艦が砲撃戦」、別の記事では「南ベ政府が重要会議」と事態の様相を伝えている。

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。