伊江島海底洞窟に新種のカニ 藤田県立芸大准教授が発見


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 伊江島のサンゴ礁にある水深約20メートルの海底洞窟から新種のカニが見つかった。「ユノカワヒラオウギガニ」と命名されたこのカニの仲間(リプケメラ属)は深海で生息し、海底洞窟で見つかったのは初めてだ。光が乏しい洞窟では目が退化するなど独特の適応をする生き物が多い中、このカニの外見は明るいところのものと変わらない。「でもそこでしか見つからず、とても不思議」と発見者の藤田喜久さん(県立芸大准教授)。その理由を探る研究を進めている。
 この成果は藤田さんと琉球大熱帯生物圏研究センター西表研究施設准教授の成瀬貫さんの共同研究。9月11日付の日本甲殻類学会の学術雑誌「クラスタシアン・リサーチ」に発表した。
 暗く危険が伴う海底洞窟へは、伊江島でダイビングサービスを行う湯野川恭さんが案内した。藤田さんは「湯野川さんは海底洞窟に詳しい上、生き物を見る目が鋭く、変わった生き物がいる場所をよく知っている。研究者だけでは調査できない」と感謝し、湯野川さんにちなんだ和名を付けた。
 この海底洞窟からは他にも新種が見つかっており、「県内あちこちを調査しているが、他にいないものがたくさんいる」と藤田さん。その理由を探ろうと、水温や塩分濃度、地形ができた歴史などを調べている。