復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉4月5日「女性秘書、毎日記者を逮捕/外務省機密文書漏えい事件」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年4月5日の琉球新報1面トップは、「女性秘書、毎日記者を逮捕/外務省機密文書漏えい事件/〝文書ルートいえぬ〟/国民的利益で黙秘/強制捜査にカベ」との見出しで、沖縄返還密約事件は外務省の秘書と記者が国家公務員法違反容疑で逮捕される事態に発展した状況を報じている。記事では警視庁捜査2課が「記者の行為は取材活動の自由の範囲を越えたものとして逮捕に踏み切った」と記している。隣接記事では「『知る権利』、法に優先/社党、政府と対決の姿勢」との見出しで、返還密約を示す外務省の機密文書を国会で暴露した社会党が「問題の本質はあくまで国民の知る権利を守るかどうかにある」と強調し「『知る権利』は国家公務員法に優先するばかりか、国民に知らせる権利を持っている報道機関に対し政府権力が及ぶことは『重大な侵害行為である』と強い態度を示している」と記し、野党側の追及姿勢を紹介している。

 2番手の左肩には「返還時に実力で基地奪還/〝ブル〟を乗り入れ整地/喜屋武反戦地主 運輸省には貸さぬ」との見出しで、糸満市喜屋武の米軍施設に復帰後にブルドーザーが乗り入れる計画を受けて同地域の軍用地主の反戦地主会が契約拒否の構えであることを伝えている。記事では地主の話として「同地域は戦前、十七軒の民家があった。米軍の引き揚げ後は、宅地にし、分家している親兄弟を呼び寄せる計画だ。運輸省が使うということで契約の申し入れがあったが、土地を取り戻すには絶好の機会だ。絶対に貸さない。地主の意思は堅い」との言葉を紹介している。

 復帰に伴う解雇問題をめぐって米軍4種の全員の移行を求めている全軍労と米軍の交渉について、米側の意向として「〝四種は限定移行〟/米側、間接雇用制で態度表明」との見出しで伝えている。

 また、米軍基地で働く警備担当員が「基地ガード、きょう労組を結成/復帰後の待遇改善で」と、待遇改善のため初めて労組を結成する動きを紹介している。

 ベトナム戦争関連では、サイゴン発の記事で「米海空軍が反撃/南ベ、解放勢力の攻勢弱まる」と政府軍が反撃を開始し、激しい戦闘になっていると伝えている。

  

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。