100円玉1枚の重み、20代前半の自分と重ね 照屋大哲(那覇・南部班)


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written by 照屋大哲(南部報道部)

 3月下旬。豊見城市在住の男性から琉球新報編集局に次のような電話があった。「新型コロナ対策の一つで、住民税非課税世帯に10万円の臨時特別給付金がある。それは助かるが、市に問い合わせや申し込みのための電話をしたら、毎回200円ほどかかってしまう。お金に困っている人を支援するためであるはずが、仕組みに不備があるのではないか」

 連絡先は教えてくれなかったようだが、お金に困窮していることは想像できた。硬貨一枚の重みだ。20代前半の自分を思い出し無視できなかった。

 県外で就職していた私は一念発起して大学進学を目指し、沖縄に戻って浪人生活を送っていた。朝から夕方まで勉強漬けで、夜11時までガソリンスタンドでバイトの日々。とにかくお金がなかった。

 100円単位で切り詰める生活。きょうおにぎりを買うとあすは我慢しなければ。本当はおにぎりだけでなく100円そばも買いたい。だが、そうするとあさってが厳しい。そんな懐事情が悔しくて100円玉を握りしめた。直径2・26センチしかない銅とニッケルでできた硬貨だが、強く握ると痛みも感じる。それはまた、憎いほど輝いても見えた。

 男性の切実な声を基に取材を進めると、同様の給付事業の問い合わせに県内4市が有料の電話回線を使っていることが分かった。3月29日付26面に記事が掲載された。

 男性はどんな生活を送っているだろうか。誰もが窓口に心置きなく電話ができて、支援につながり、胃袋を満たせる、そんな社会になってほしい。

(豊見城市、八重瀬町、久米島町、南大東村、北大東村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。