復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉4月10日「沖縄米軍、戦闘体制に」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年4月10日の琉球新報1面トップは、「全軍労スト、三役の責任で中止指令/あすから職場復帰/臨時大会開き信を問う/組織問題に発展へ/〝中闘委開けずやむなし〟」との見出しで、復帰に伴う大量解雇などに反対して1カ月以上ストを続けている全軍労の執行部がスト解除の方針を決めたことに対し組合員が反発していた件で、吉田勇委員長が中央闘争委員会を開かず収拾の指令を出したという記事を掲載している。隣には解説記事として「組織敵危機に直面」との見出しで「こんどのストは沖縄労働運動史上画期的な闘争であり、まさに組織と生活をかけての戦いであった。したがって三十五日間の戦いの総括の見通しも立たないままの混乱は深刻で根深い」と記している。

 沖縄返還密約に関する外務省の機密文書が国会で暴露されたことに関連して新聞記者らが逮捕された件の続報で、記者が釈放されたことを伝える記事も掲載している。東京地裁が「新聞社の準抗告申し立てを認め、同記者に対するさ拘置決定を取り消した」と伝えている。さらに関連記事として「漏えい文書は十数通も/審議官から事情聞く」との見出しで、記者を逮捕した警視庁捜査二課の調べとして「記者に渡った文書は問題の日米沖縄返還交渉をめぐる極秘電報のコピー三通を含め、十数通に及んでいたことをつきとめた」と報じている。

 ベトナム戦の情勢に関する続報も掲載している。左肩の2番手には「軍事対決の構え強める/南ベ全土で攻防続く」との見出しで、解放勢力と米軍、南ベトナムの攻防戦が激しくなっていることを伝えている。隣には「北ベトナム軍、戦車隊と交戦」との共同電。さらには「米戦闘爆撃機、50機以上を移駐/第7艦隊、旗艦も出動」と、米軍が南ベトナム政府軍の支援に爆撃機を派遣させるなど、「北」への攻撃態勢を強化する方針であることを報じている。また「沖縄米軍、戦闘体制に/モスクワ放送指摘/海兵隊の増援部隊も」との見出しで、沖縄での米軍行動の活発化を伝えている。記事ではモスクワ放送の解説を紹介し「いま沖縄で軍の活動が活発化していることは、米国の軍部が沖縄を日本に返すにあたって、米軍を沖縄に残すばかりでなく、東南アジア侵略のジャンプ台としていこの島を利用しようと考えていることをはきり示している」と述べたという。

 

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。