DV加害米兵、基地内で行動規制なく暮らすケースも 実態見えず、専門家は形骸化を懸念


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 2019年に北谷町で発生した女性殺害事件では、米軍は事件発生の約3カ月前、被害女性からの性的被害の訴えを受けて、3等兵曹にMPOを発令した。県警も米憲兵隊から通報を受け、女性をドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー事案の保護対象者に指定し、定期的に近況を確認していた。事件当日、米軍から外泊許可を得た3等兵曹は、基地外に出て女性を殺害した。米軍は外泊許可の情報を県警に伝えていなかった。事件後もMPOの内容や行動規制の詳細を公にしていない。

 米軍関係者とのトラブルなどに対応する、国際家事相談NPO「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は「事件から3年が経過したが、米軍側の情報開示や共有姿勢は改善されたようには見えない」と話す。問題行動を起こした米兵が軍から外出禁止やMPOなどの命令を受けても、基地の中で不自由なく生活しているケースも少なくないという。米軍から被害者側にMPOなど命令の詳細は明かされず、対象者がどの程度の監視下にあり、どの程度の有効措置が取られているのかなど不明な点が多い。スミス代表は「強制措置の実態は見えづらく形骸化している可能性がある」と指摘する。

 3年前の事件を受け、県は「国際家事福祉相談所」を設置した。離婚や養育費請求、面会交流などさまざまなニーズがあり、相談件数は増加傾向にある。スミス代表は「トラブルが発生した場合、米軍は被害者の目線には立たず米軍側の見解や意向を尊重する。言葉の障壁もある被害者が声を上げ、トラブル解決に向けて主体的に行動する必要性を求められる。誰かが被害者になる前に、手を差し伸べられる体制づくりが求められている」と訴えた。
 (高辻浩之)