「次の被害者は私かも」米兵DVにおびえる女性 軍の接近禁止令も歯止めならず


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米海兵隊員の元夫に熱したアイロンを押しつけられできた背中のやけど傷(提供)

 2019年4月、北谷町のアパートで在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹が住人の女性を殺害し自殺した事件から、13日で3年を迎えた。発生当時、3等兵曹は被害女性との接触や連絡を禁ずる、軍事保護命令「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」を科されており、軍の制限下にある中で凶行に及んだ。県内では事件後も米軍関係者による事件が後を絶たず、専門家は「形骸化された制限措置では同様事件の再発は防げない。誰かが被害者になってからでは遅い」と警鐘を鳴らす。

 「次の被害者が私でもおかしくない」。本島在住の20代女性は北谷町の事件を重く受け止める。女性は在沖米海兵隊員の元夫(24)から暴力を受けていた。米軍は元夫に女性との接見を禁ずる命令を科した。しかしこれまで複数回、自宅や勤務先周辺で元夫が目撃されているという。「暴力を受ける度、殺されるかもしれないとおびえていた。何のための接見禁止命令か」と不安を募らせる。

 元夫の暴力は交際中に始まった。女性は何度も米憲兵隊への通報を試みたが、軍からの処罰を恐れた元夫に阻まれた。背中には、熱したアイロンを当てられたやけどの傷が今も残る。軍にドメスティックバイオレンス(DV)の被害を訴えた際には、法律用語が並ぶ英語の書類にその場でサインを求められた。専門的な知識が乏しい被害者個人での対応には限界があると感じている。

 昨年12月下旬、基地外にある女性の職場近くのクラブに、元夫がいると友人から連絡を受けた。全身の震えが止まらなくなり仕事を早退した。この時、元夫は大麻取締法違反などの罪で那覇地検に起訴され、保釈中だった。

 米軍に問い合わせると「規律上、上官のエスコートなしに基地外には出られない」と回答があった。しかし、その後も基地外のクラブなどに出入りする様子が複数回、確認されているという。米軍からは接見禁止命令の詳しい内容は知らされていない。より強い行動規制を科す「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」の説明も米軍からはなかった。

 女性は県の国際家事福祉相談所を通じて元夫との離婚を成立させた。「(元夫は)基地の内外で好き勝手にしている。被害を受けた側は行きたいところにも行けず、逃げ隠れする生活を強いられている。このまま泣き寝入りするしかないのか」と語気を強める。

 琉球新報は元夫の行動規制や外出の状況について米軍に問い合わせたが、保釈中であるとの回答にとどまり、詳細は明らかにされなかった。
 (高辻浩之)