【深掘り】沖縄県が「まん延防止」に慎重な理由は? コロナ拡大、大型連休前に問われる対応


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観光客らでにぎわう国際通り=14日、那覇市

 玉城デニー知事は14日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ「まん延防止等重点措置」の適用申請に関し、現時点では慎重な姿勢を示した。デルタ株が流行した昨年の第5波は20代などの若者層が感染の中心で、重点措置によって飲食店中心の対策がとられていたが、高齢者や子どもに感染が広がる現状では効果が限定的だと判断した格好だ。

 ただ、県内の新規感染者数は23日連続で前週の同じ曜日を上回るなど厳しい状況が続く。政府が初めて社会、経済活動を停止させる「緊急事態宣言」を発出して7日で2年がたったが、特性が異なる変異株の流行が断続的に続く中、玉城県政は手探りの難しい対応が続いている。

■「目付役」

 13日に開かれた沖縄振興審議会で、赤嶺昇県議会議長は「この2年間の、コロナ禍での沖縄の状況をチェックする必要がある」と述べた。県が宿泊料から数百円を徴収する「宿泊税」を検討していることに対し、ホテル業界など、観光業から抗議が相次いでいるとも強調。県のコロナ対策について「県の施策への抗議の陳情を受けた」などと指摘した。沖縄振興を話し合う場では異例となる、県のコロナ対策への批判を展開した。

 県が重点措置の要請を判断しないことに対して、不安視する県民の声もあるが、岸田文雄首相は13日の国会答弁で、重点措置は「直ちに必要な状況とは考えていない」と明言した。

 14日に県庁で開かれた県対策本部の直前、県関係者は観光業界の声も踏まえつつ「首相が明言している現状で、重点措置の要請はしばらくないだろう」との見通しを語っていた。

 一方、政府は12日~15日までの4日間に「官邸や各省幹部とホットラインで対応する」(松野博一官房長官)として、4人の連絡員(リエゾン)チームを県に派遣した。だが、目的は政府方針と県の意見をすり合わせるための「目付役ではないか」(県関係者)との見方もある。

■難しい判断

 県の判断に対し、医療関係者は「過度な制限を発出しても、事態を静観しても批判を受ける。県にとって難しい状況」とおもんぱかった。

 日常生活や経済を守る視点から「重点措置を選ぶにしても、従来通りの中身では県民の理解も得られにくいのでは」とも述べた。ただ、那覇市を中心に、観光客が戻りつつある。

 ソフトバンク子会社「Agoop(アグープ)」のデータによると、那覇空港の滞在人口平均値は、緊急事態宣言が出されていた20年の同月比で、午後3時台は85.4%増、同9時台は161.6%増と高い伸びをみせた。

 観光業者の「稼ぎ時」を迎える大型連休を前に、県内の感染者数抑制と水際対策を両立させる二正面の対応も問われる。
 (池田哲平、嘉陽拓也)