ゴカイ完全養殖成功 エビの餌、県が疾病対策強化


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飼育3カ月後のゴカイの成虫(提供)

 県は19日、クルマエビの養殖に際して、種苗生産で採卵する際に必要な餌(催熟餌料)として用いられる「ゴカイ」の完全養殖技術を開発したと発表した。海洋深層水の低温性を活用した養殖ゴカイはウイルスに感染しておらず(ウイルスフリー)、技術の確立によりウイルス疾病などの防除態勢が強化され、クルマエビの安定的な生産につながることが期待される。県内のクルマエビ種苗の約90%を生産している車海老漁協種苗供給センター(久米島町)で、今月下旬から同技術を用いたゴカイの養殖事業が本格始動する。

 日本一の養殖クルマエビ生産地である沖縄では、急性ウイルス血症(PAV)の対策が急務だった。PAVは甲殻類のみに感染し、発病したエビは死滅する可能性が高い。県では1999年に大流行し約25億円の損失が出た。昨年12月にも宮古島で養殖クルマエビ140万匹が死滅し約1億円の損害が出ている。

 県海洋深層水研究所ではウイルスフリーの母エビの生産技術を確立し、同センターへ技術移転。県内クルマエビ養殖企業へ健全な母エビを供給してきた。並行してウイルスフリーゴカイの養殖技術開発にも取り組んだ結果、2019年度までに完全養殖に成功した。

 県車海老漁業協同組合の安里一月組合長は、採卵時に使用するゴカイはこれまで外部から仕入れていたため、安定供給に課題があったと指摘。「安定した生産により、今後はより安心安全なクルマエビを供給していきたい」と述べた。
 (当銘千絵)