【識者談話】判断から逃げた裁判所 琉球遺骨返還請求訴訟(上村英明・恵泉女学園大名誉教授)


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上村英明・恵泉女学園大教授

 国内法が整備されていない分野で何が正しいかを判断するために、国際法を使うのは当たり前の話だ。

 北海道平取町の二風谷ダム建設の差し止めを求めた訴訟で、1997年の札幌地裁判決はアイヌ民族を先住民族と認め、ダム建設の違法性を指摘した。少数民族の権利保護を定めた国際自由権規約27条に沿った判断だった。今回の訴訟でも原告側はこの判例を示し、国際法も返還請求権を基礎づけると主張したが、裁判所は認めなかった。

 国連の自由権規約委員会などは琉球人の先住民族としての権利を保護するよう日本政府に勧告している。しかし今回の判決は国際法の基準を選択しなかった。

 先住民族の権利を考える時、過去の清算が大事だ。北海道に日本の統治が及ぶ前にはアイヌ民族の権利があったということを認めたところが、二風谷判決の画期的な点だ。

 人類学者が琉球から遺骨を盗んだことについて、日本の研究者が沖縄で思い通りにできた点をどう判断するか。このことから裁判所が逃げたことが問題だ。日本の司法は国際法を直接導入していくべきだ。国際人権法に則した法整備を進めない国、国際法を取り入れない裁判所の双方に責任がある。
 (国際人権法)