50年前の「英知の結晶」を今に 琉球政府が日本側に申し入れた「屋良建議書」全文を復刻へ 小禄9条の会


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「復帰措置に関する建議書」(屋良建議書)を打ち直し復刻版を出す作業を進めている「小禄九条の会」事務局長の小渡律子さん=19日、那覇市

 1971年に琉球政府の屋良朝苗主席(当時)が日本政府に申し入れた「復帰措置に関する建議書」(屋良建議書)では、「基地のない平和の島」としての日本復帰を望んだ。しかし自衛隊の配備を前提にした復帰に「県民意志と大きく食い違い、国益の名においてしわ寄せされる沖縄基地の実態だ」と指摘。自衛隊配備に反対し、再考の必要性を訴えた。

 建議書では自衛隊配備について「絶対多数が反対を表明している」として、沖縄戦と戦後の米軍支配から戦争につながる一切のものを否定する県民の強い思いを挙げた。

 しかし、県民の反対にもかかわらず日本政府が自衛隊配備を進めることに対し、「基地の強化を図ることにほかならない。海外諸国を刺激し、沖縄基地にまつわる不安は増大こそすれ軽減することはない」と指摘した。

 今、建議書の全文をパソコンで打ち直し、復刻版として刊行しようと作業を進めているのが、那覇市小禄地域の住民などでつくる「小禄九条の会」事務局長の小渡律子さん(77)たちだ。

 集団的自衛権の発動が取り沙汰される流れを受け、昨年の総会では「那覇空港が軍事航空基地として機能強化・拡大されることに強く反対する」アピールを採択した。小渡さんは建議書について「50年前の英知の結晶。しかし政府は一顧だにせず、建議書と全く違う沖縄の現実がある。だからこそ多くの人に読み解いて、知ってもらいたい」と話す。(中村万里子)