沖縄でも受け入れられた「迷彩服」通勤 急患搬送と災害救助で変わるイメージ<駐屯50年「自衛隊」と沖縄>②


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CH47JA大型輸送ヘリで離島から搬送した患者を那覇市消防局に引き継ぐ陸上自衛隊員ら=6日、那覇基地

 陸上自衛隊が那覇基地を拠点に実施する緊急患者空輸が4月6日、1万件の節目を迎えた。急患輸送や災害派遣、不発弾処理など自衛隊の民生への貢献は、自衛隊に対する県民意識変化の一因となってきた。

 陸自はヘリなどを使って、沖縄県全域と鹿児島県の奄美大島以南で急患輸送を担当する。両県知事の要請で、離島の医療機関で対処できない患者を沖縄本島に運んでいる。

 夜間や悪天候時の出動も多い。急患空輸1万件達成を受け、玉城デニー知事は「患者の迅速な搬送に陸自の協力は必須だ。24時間態勢で、住民の命を救うため全力を尽くす任務への姿勢とご苦労に深く感謝する」との談話を出した。

 隊員らの日常にも、県民意識の変化は影響する。以前は私服で通勤していた隊員らは、2011年の東日本大震災を機に、隊服で通勤するようになった。あるベテラン隊員は「2000年代まで沖縄で迷彩服を着て出勤なんて考えられなかった。今は他府県同様に受け入れられている」と感慨深げだ。

 9日、那覇駐屯地で開かれた陸自第15旅団の自衛隊候補生教育入隊式でも、県民意識の変化が垣間見えた。18~27歳の県出身者約60人が、家族に見守られながら決意を述べる様子を、隊員の出身市町村の首長らも参列して見守った。祝電を寄せた那覇市の城間幹子市長は「国防という崇高な任務の達成、自然災害での人命救助や生活基盤の復旧・復興に貢献する自衛隊は、わが国の平和と国民の生命や財産を守る礎で、心強く思う」と激励した。

 一方、対中国を念頭に、政府は先島への自衛隊配備に力を入れる。井土川一友旅団長は、入隊式あいさつで来年3月の石垣島での駐屯地開設に触れ「諸君の中には八重山から入隊してくれた人もいる。ぜひ八重山警備隊発足時に最初の隊員として、その地で頑張ってもらいたい」と、地元の若者の入隊を歓迎した。

 米軍基地問題に比べて、先島配備など自衛隊の問題について議論が低調なのが現状だ。沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「軍事組織としての自衛隊が中国と先島で戦争をすることを止めることと、沖縄社会にいる自衛隊員や家族との向き合い方は分けて考えないといけない」と指摘する。

 自衛隊が民生協力を進めてきた現状に触れつつ「逆手にとって『そうした自衛隊を戦争に行かせるべきか』と、紛争の現場に出さないための論理構成も可能だ。軍備を使わず、災害対応や救難は懸命にやる自衛隊であり続けるべきだ、と主張することもできる」と提起した。
 (塚崎昇平、稲福政俊)