医療的ケア児に服薬などアドバイス 県薬剤師会が支援へ 沖縄市と厚労省事業で連携


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 日常的に人工呼吸器やたんの吸入など医療支援が必要な医療的ケア児の支援に薬剤師会が加わる取り組みが、県薬剤師会と沖縄市の間で進んでいる。厚労省のモデル事業を受け、同会の中部地区薬剤師会が沖縄市の医療的ケア児等支援連絡会に加わり、処方薬を手渡す際の情報提供や、訪問による服薬の助言を担うことを想定している。県薬剤師会の佐藤雅美常務理事は「薬学の専門家としてだけでなく、ケア児や家族の日常生活を支える一助になっていきたい」と語った。

多職種で連携

県薬剤師会が作成した「他職種連携シート」。医療的ケア児の家庭の困りごとなどに関係機関で対応することを目的としている

 モデル事業は、厚労省の「成育医療分野における薬物療法等に係る連携体制構築推進事業」で、沖縄を含む全国10都府県の薬剤師会で行われる。県薬剤師会は、入退院時や訪問医療に関わる相談支援員や保健師などと連携できる「多職種連携シート」を作成し、ケア児を育てる家庭の課題解決に取り組む。

 小児在宅医療に対応する薬局も拡大したい考えだ。現在、同会に登録している547店舗のうち、小児用の薬を製剤するのは38店舗にとどまるため、医療的ケア児の家庭がアクセスしやすいように、対応できる店舗を増やしていく。また、薬局の窓口では、福祉サービスに関する情報提供も進めていくことも想定している。

生活の質向上へ

 薬剤師会との連携を始めた沖縄市障害福祉課によると、市内在住の18歳未満の医療的ケア児は把握しているだけで58人。市では、当事者や医師、保育・幼育関係者らで構成する同連絡会で、登園などの支援を行っている。

 同連絡会のメンバーである沖縄市障がい者基幹相談支援センターによると、医療的ケア児の家族は、ヘルパーや訪問看護などの支援があるものの、服薬などの医療的ケアが生活の中心となっているという。

 こうした環境下に薬剤師が関わり、相談の上で服薬の時間や量を調整できれば、ケア児の活動時間を増やせるほか、家族の心的負担の軽減も見込まれるという。同センター長の島和也さんは「情報を基に連携できれば、家族の生活実態にあった服薬方法も提供できる上、医師へのフィードバックもできる」と期待を寄せる。

 厚労省の2020年度調査では、県内の薬剤師は人口10万人当たりで148・3人と全国で最も少ない。医療的ケア児に対応できる薬局ばかりではないものの、佐藤常務理事は「まずは薬剤師1人1人が、医療的ケア児への関心を持つことが重要。できることから支援の輪を広げていきたい」と語った。 

(嘉陽拓也)