糖尿病薬で血液のがん抑制 副作用軽減や他治療への適用にも期待 琉大研究チーム


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 琉球大学は25日、病状の進行が非常に早く決定的な治療法がない血液のがん、成人T細胞白血病に対し、糖尿病治療薬を活用してがん細胞の増殖を抑えることができるとの研究結果を発表した。琉大によると世界初とみられるという。安全性が確認された既存の薬を用いることで、抗がん剤の副作用軽減やほかの種類のがん治療への適用、2型糖尿病患者のがん発症を抑制する効果が期待できるという。

 研究チームである、同大学院医学研究科の内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座の益崎裕章教授や仲地佐和子講師、岡本士毅助教らが同日、記者会見を開いた。

 研究チームは、同白血病の症状が悪化する急性期のがん細胞が「SGLT2」というタンパク質の一種を用いて、体内のブドウ糖を多く取り込んで増殖する点に着目した。「SGLT2」は健康な人の腎臓でもブドウ糖を再吸収しており、がん細胞が腎臓と同じ仕組みでブドウ糖を吸収していることを発見した。

 糖尿病患者に対して、尿から糖を排出するために使用する「SGLT2阻害剤」を同白血病患者に使用すると、がん細胞がブドウ糖を取り込めず、細胞増殖が抑制されることも突き止めた。益崎教授は「がんに加えて別の臓器機能障害がある患者に対しても、SGLT2阻害剤を組み合わせれば、薬の効果が高まる可能性がある」と説明。現段階は細胞実験のため、今後はマウスなどで効果を確認し、人への臨床研究に進むという。
 (嘉陽拓也)


<用語>成人T細胞白血病

 母乳や性交などを経路に感染する「HTLV―1」が原因となる。感染者は全国で約百万人おり、年間700~千人が発症する。九州・沖縄地方に患者が多いという。潜伏期間は40~50年と長いため、多くは50歳以上で発症する。骨髄移植で完治する例もある。