辺野古市民訴訟 識者談話 前田定孝氏(三重大准教授) 「行政過程の統制」放棄


社会
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前田定孝氏

 判決は2020年3月に一度認めた原告適格を否定し、公有水面埋立法に基づく県の承認撤回の違法性や、それを取り消した国土交通相裁決の違法性の具体的検討を回避した。関係地域等に居住する住民の原告適格を否定し、裁判を受ける権利を狭めた。原告適格を制限するもので、04年の行政事件訴訟法改正の趣旨に反する。司法が担うべき「行政過程の統制」という役割も放棄した。

 11人の原告適格を却下した20年4月の判決は軟弱地盤に伴う設計変更で「改めて環境影響評価が実施されるべき」としただけに、住民への影響を限定したことは残念だ。

 他方で判決は沖縄防衛局の、国交相への行政不服審査制度乱用に関する批判に微細に反論した。一連の訴訟でその公正性が問題視されただけに、悪質な判断といえる。

  (行政法)