美ら海水族館で世界初、2種の繁殖成功 きょうから生態展示 ハタゴイソギンチャクとクロイワトカゲモドキ


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 【本部】本部町の沖縄美ら海水族館は28日、カクレクマノミのすみかとして知られる「ハタゴイソギンチャク」と、沖縄本島とその周辺にのみ生息する「クロイワトカゲモドキ」の繁殖に世界で初めて成功し、29日から生体の展示を開始すると発表した。

水族館生まれのハタゴイソギンチャクとカクレクマノミ(沖縄美ら海水族館提供)

 ハタゴイソギンチャクはインド洋から西太平洋のサンゴ礁域に広く分布する大型のイソギンチャク。日本では奄美諸島以南に生息し、直径が50センチに達する。有藻性のサンゴと同じように、体内に褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンを有し、光合成で作られた養分を吸収する。観賞用としても人気がある一方、性別の識別が難しいなどの理由で繁殖技術はこれまで確立されていなかった。美ら海水族館は独自に開発した方法で雌雄を判別して飼育。2020年と21年に産卵を確認した。この時に得た卵を育成し、稚イソギンチャクにまで成長させることに成功。同館で生まれたカクレクマノミと一緒に「サンゴ礁の小さな生き物」で展示する。

ふ化直後のクロイワトカゲモドキの幼体(沖縄美ら海水族館提供)

 クロイワトカゲモドキは原始的な地表性ヤモリの仲間。沖縄周辺諸島に5亜種、鹿児島県に近縁種が生息する。民家の石垣や生垣も隠れ家として利用しており、以前は身近な生きものだったが環境開発や違法採集、外来種の脅威などで減少。現在は県の天然記念物・国内希少野生動植物種に指定されている。美ら海水族館は飼育・繁殖のための研究として、19年度から特別な許可を得て捕獲した個体を親として飼育。3年かけて交尾・産卵・ふ化に初めて成功した。夜行性で警戒心が強く、飼育が困難なことから繁殖に関する研究はほとんど進んでいなかった。ふ化時の大きさは全長約7・5センチで体重は1グラム。4月現在は12・2センチ、6グラムまで成長した。同水族館1階の「琉球弧の水辺」で展示する。

 クロイワトカゲモドキを含む希少種保全の実績が認められ、美ら海水族館は11日付で県内初となる「認定希少種保全動植物園等」制度の「希少種保全動植物園等」に認定された。

(松堂秀樹)