復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月1日「新たな戦いへの出発」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月1日の琉球新報1面トップは、「金武湾のCTS基地/規模は500万キロリットルが限度/狭すぎる用地/開発の阻害要因にも/予定の4分の1」との見出しで、平安座島周辺での石油コンビナート基地(石油貯油施設、CTS基地)整備規模に対して、琉球政府や本土政府からも問題視する声が出ていることが紹介されている。

 既存のガルフ社の施設に加えて、三菱石油とアラビア石油などの各石油企業が計画しており、記事では「これは日本最大といわれる鹿児島の喜入石油基地(日石、三百万キロリットル)の約六倍で世界最大規模のCTS基地。しかも喜入基地の場合、沖縄本島がスッポリはいる鹿児島湾に面していながら三百万キロリットルであるのに対し、沖縄は金武湾というきわめて狭い湾に約二千万キロリットルものCTS基地。基地を建設することになる」「行政府も既存のガルフ、建設計画中の三菱、アラビア、共同の各企業のCTSを合計して五百万キロリットルに押える方針で行政指導を考えている」と状況を説明している。

 復帰を控え米国統治の終了を見越して、「米統治への総決算」というタイトルの連載記事も始まった。連載冒頭では「米軍が復帰後もほとんど変わりなく存続することが重く県民の心にのしかかるからであろう。この異民族統治のなかでつちかった県民の戦いの歴史は、復帰後も県民の一つの〝財産〟であることにはちがいない。そこで県民の戦いの歴史、とりわけ異民族統治のいわれなき重圧をはね返した足跡をふり返えり、県民が祖国への一歩を踏みしめることの意義をさぐってみる―」と趣旨を説明している。

 連載初回は、「新たな戦いへの出発/主席、〝復帰はひとつの成果〟」との見出しで、屋良朝苗主席の視点や米民政府と琉球政府との関係など米施政下の27年を振り返っている。連載は「闘争の歴史の積み重ねで復帰は目前に迫まった。本土同胞には、まったく経験のない闘争の歴史であったことには間違いない。それでも復帰協を中心に革新諸団体は『自衛隊配備反対』―へと新たな戦いを組む。経済団体は本土資本への対抗処置に追われる。新生・沖縄県づくりへの経済戦争の幕開けだがこれまでの歴史の足跡から一本のクギを拾うことこそ、沖縄県への出発ではなかろうか―」と締めくくっている。

 このほか、「きょう、統一メーデー/自衛隊配備に反対/〝完全復帰〟など要求し」や「保全、開発の調和を/海洋博シンポジウム開く」、「書簡、返還日に届く/福田外相『核抜き』で語る」などの見出しの記事も掲載している。

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。