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意外に使えるバス、活用を 石垣綾音・まちづくりファシリテーター<明日からできる わたしの一歩>


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石垣 綾音(まちづくりファシリテーター)

 沖縄のさまざまな社会課題の解決へ、県民が参加してできることは何か。まちづくりファシリテーターの石垣綾音さんを軸に県内若手に寄稿してもらう。初回のテーマは「交通問題」。

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 地域課題についてのワークショップで必ず上がる話題は交通問題だ。高齢者による交通事故、子どもや運転に慣れていない観光客の移動などを考えると、車以外の移動手段の確保は人々の心身の健康や、さまざまな機会にアクセスする権利の保障にも大きな課題だ。そして多くの地域にとって今一番身近な公共交通は路線バスだ。

 あえて言いたいのだが、バスは使いやすくなっている。以前は私も最寄りのバス停の位置すら知らなかったが、最近は使い慣れた地図アプリで経路を検索し、バスで出かけることが増えた。遅れるイメージがあるが、県公衆衛生協会によるとその遅れは平均4分。車も渋滞や事故で遅れるリスクは同じなのだから、4分なら誤差の範囲内ではないだろうか。

 経路検索が可能になったのは、2019年に県内バス事業者が自社の路線運行データを提供し始めたからだ。一部はオープンデータとして公開されている。この沖縄県観光2次交通オープンデータ(OTTOP)を整備した沖縄オープンラボラトリは、これらを活用してイベントを開いている。

 昨年度は、学生や公共交通政策に関わる行政職員、データ関連事業者が「学生」「生活」「観光」の3チームに分かれ、「パーク&ライドは本当に良いの?」という検証や、琉大周辺のバス利用の可能性の検証、ある飲み屋街から最終バスで帰るには何時に切り上げるべきかなどを可視化するユニークなワークショップを行った。

 行き先や時間帯で分析してみると、意外に那覇で遅くまで飲んで沖縄市に帰れること、琉大から特定の目的地に行く際に便利な時間帯などが見えてきた。実際に使うことを想定をしたため改善すべき点もより明確になった。バスの可能性を感じると同時に行政任せ、バス会社任せではなく、自分たちで使う方法を模索することができた。

 ちなみに遅延情報はバスロケというシステムで検索できる。まずは近くのバス停を検索して、どんな路線が近くに通っているのか、モノレールなどと組み合わせてどこまで行けるか、見てみるのもいいだろう。週に一度の通勤・通学や短距離の移動から、バスを使ってみてはどうだろうか。


 いしがき・あやね 1990年那覇市生まれ。琉球大で社会学、ハワイ大学大学院で都市計画を学び、都市計画コンサルなどで働いた後にまちづくりファシリテーターとして独立。「人と土地をつなぐ、コミュニティをエンパワメントする」をモットーに各分野で活動中。