復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月3 日「『九条』新局面迎える」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月3日の琉球新報1面トップは、「きょう憲法施行25周年/『九条』新局面迎える/定着の中に根強い改憲論/護憲勢力は対決の姿勢」との見出しで、復帰を控えた沖縄からの日本国憲法の有り様を伝えている。

 あわせて屋良朝苗主席のメッセージも掲載している。屋良主席のメッセージについて「本土復帰の年で県民が平和憲法下におかれることを喜ぶ一方、大きな戦争犠牲をこうむった県民の平和を願う心は、単に『基地アレルギー』では片づけられないことを強調している」と紹介している。以下に屋良主席のメッセージを紹介する。「ことしの憲法記念日はとくに意義深い。県民が願い続けていた『祖国に帰る年』であり、平和憲法の当事者に県民が加わる記念すべき年である。世界史の上でも大きな戦争犠牲をこうむった県民が持っている『戦争をにくみ、平和を願う心』というものは『軍事アレルギー』といって片づけられるものではない。それだけに平和と民主主義と、基本的人権に貫かれた日本国憲法にたいする執着はきわめて強いものがある。ことしは憲法が施行されてから二十五周年にも当たり、四分の一世紀を経たことになる。これを機会に全国民ひとりひとりが平和憲法の原点にたちかえり、それを再確認し、沖縄の復帰と憲法とのかかわりあいを自分自身の問題として受け止め、深く考えたい。県民とともに憲法の原理と精神を守り、その普及活動に全力をつくし、正しい憲法認識をもつことによって、これまでつちかってきた県民自治を基調とした平和で明るい豊かな沖縄県づくりにまい進する決意である」

 連載「米統治の総決算」は3回目が掲載されており、テーマは「立法院の創設」。ただただ米軍が統括して沖縄人民にとって無権利状態だった沖縄が、曲がりなりにも1952年2月29日の布告で琉球政府が設立され、住民の自治権確立などを嘱望して発足された立法院の位置づけを「〝統治の壁〟くずす/〝復帰〟で住民意思を集約」との見出しで振り返っている。

 次いで、復帰後の沖縄の米軍基地の配置を示した基地リストが復帰直前の段階になって修正の動きがあったところ「〝A表〟も一部返還/基地リスト、実質的に修正」との見出しで、新たな返還リストについて紹介している。

 復帰に伴う米軍基地や自衛隊基地の新たな契約について「〝土地契約を急ぐな〟/革新議員・民主団体、軍用地主へ訴え」との見出しで、復帰後の軍用地提供の在り方についての記事を掲載している。

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。