【識者談話】髙良沙哉氏(沖縄大学教授) 軍拡意識の緩和 危うい


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 沖縄は自衛隊と米軍の基地があり、台湾有事の議論もある中で、憲法の平和主義は一般市民にも身近で重要な問題だ。改憲議論に直接的に関わる国会議員に加え、首長の憲法への意識は市民にとっても関心事と言える。政治家が考えを明示した方が有権者は投票先を選びやすい。

 ほとんどの首長・国会議員が現憲法を評価した。一方で憲法9条について「変える必要がある」と「必要はない」が拮抗(きっこう)している。新型コロナウイルスの影響もあり、国民は改憲議論を活発にする状況にない。生活に意識がいきがちな中、条文の見直しや加憲を考える首長が多くいることに、国民と政治家の温度差を感じた。

 非核三原則について「議論を進めるべき」とした首長は7人だった。被爆国の日本では、非核三原則の議論を始めること自体が被爆者らにとって大きな変更だ。核に頼らない安全保障を考えるべきで、議論そのものに慎重さが求められる。ウクライナ情勢に刺激を受け、軍拡への意識が緩くなるのは危うい。

 首長、国会議員は憲法擁護義務を負う。軍事力で平和をつくるのは難しいという歴史のもと、憲法が制定された。安易に改憲し、軍事力を強化するのが、沖縄にとって現実的なのか。憲法の意味を十分に学び、平和をつくる努力をしてほしい。

 (憲法学)