〈105〉救急外来 迅速、適切な医療のために


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「救急医療」と聞いて、みなさんは何を想像されるでしょうか。交通事故や心筋梗塞、脳出血など、一分一秒を争う重症の方が運ばれてくるところだとか、少し怖いイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

 救急外来は、突然の事故や病気に襲われ、緊急で検査や処置が必要な患者さんに迅速に対応するための病院の診療部門です。

 ですが、実際には「ずっと前から症状はあるけど、どこに行けばいいか分からないから」とか「昼間は仕事が忙しいから夜に診てもらえるところに」などと言った理由で受診されたり、緊急性は低いのに救急車で受診されたりする方もいます。新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)により、最近ではどの医療機関も逼迫(ひっぱく)しており、救急外来もその影響を強く受けています。緊急性のない患者さんがたくさん救急外来に押し寄せると、一刻を争う処置が必要な重症患者さんに、迅速で適切な医療が施せなくなる恐れがあります。

 例えば、風邪や嘔吐(おうと)下痢、小さな切り傷、慢性的な症状などは、お近くのクリニックやかかりつけの先生でも十分に対応が可能なことがあります。救急外来への受診を考えたときは、それが本当に必要かどうか今一度ご検討いただくことで、現在の逼迫した医療状況を緩和する助けになるかもしれません。

 判断に迷われる場合は、まずはかかりつけの先生にご相談したり、医療機関に電話で問い合わせたり、お子さんであれば#8000(子ども医療電話相談)で電話相談したりするのがいいでしょう。

 また、消防庁が提供している緊急度判定アプリ(全国版救急受診アプリ「Q助」)も、症状に合わせてどう対応すればいいかを教えてくれます。

 急病や事故はいつ誰に起こってもおかしくありません。どんな方にもすぐに対応できる救急医療を提供できるように私たち医療者も懸命に頑張っていますが、同時に、救急医療に対するみなさんのご理解、そしてお互いを思いやる気持ちがあれば、今よりもっと効果的に、本当に必要な方が必要な医療を受けることができます。どうぞご協力のほど、よろしくお願いいたします。

(山内素直、友愛医療センター 救急科)