復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月7日「自治神話論―専制施政を暴露」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月7日の琉球新報1面は、「きょうから外貨集中性を廃止/沖縄の特別措置も不要に/外人の外貨使用自由」との見出しで、外貨のドルを原則として使用・保有できず、使用できる店も限定する外貨集中制度を日本本土で廃止する方針となったことを伝えている。これで「政府は、一昨年、沖縄の基地収入を復帰によって急激に減少させないため、米軍人や軍属、その家族、それに外国人の旅行者がドルで買い物をしたり、食事をしたりできる制度を沖縄に特別措置として設ける方針を決めていたが、増大する外貨保有対策から本土でも自由化するため、沖縄に対する特別措置は設けないことになったものの、実質的な効果は、従来の方針と変わらない」と解説している。さらに背景について「すでに沖縄に対しては、七〇年十一月の閣議決定で『非居住者による外貨の自由使用』を決めていることから『このさい沖縄への政策に合わせた方がよい』との理由から外貨集中制度廃止に踏み切ることになった」とも説明している。

 日常生活回りの情報としては「公共料金、きょう値上げ告示/復帰後の物価上げに拍車」との見出しで、バスやタクシー、観光バス、離島航路などの公共料金を1ドル=360円に読み替えるのに伴って16.77%の値上げを認可することになったと伝えている。バス料金は、市内が大人7セントのところを8セントへ、子ども4セントから5セントに値上げ、タクシー代は小型の基本料金が20セントから24セントに値上げされる。さらに記事では「公共料金の一斉値上げが復帰時の物価を刺激するおそれもあり、復帰インフレの誘発が心配されている」と指摘している。

 さらに「衆院、九日に『沖縄総括』」との見出しで、沖縄関係3法案の審議が集中的に行われる衆参両院の審議を見通す記事を掲載している。

 復帰を前に始まった連載「米統治の総決算」は6回目で、キャラウェイ高等弁務官の「自治神話論」がテーマ。米国留学した沖縄人でつくる金門クラブでの演説でキャラウェイ高等弁務官が「沖縄の自治は神話である」と述べたことなどを上げて、「キャラウェー旋風」のもたらした意味についてさまざまな角度から米施政を検証している。

 

 

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。