【記者解説】弱まる運動としての「新基地反対」、県民意識に変化も 新報・毎日世論調査


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米軍普天間飛行場(資料写真)

 琉球新報と毎日新聞が実施した復帰50年の合同世論調査では、県内・全国とも復帰を高評価したが、沖縄の米軍基地負担については意識の差が表れた。在日米軍基地の沖縄への集中を「不平等」だとする意見は、県内では6割に達したが、全国は4割にとどまる。さらに県内・全国とも日米安全保障体制をおおむね評価し、中国の軍事力強化を不安視するが、全国の過半数が沖縄の米軍基地が自らの住む地域には来てほしくないと回答した。復帰50年が経過しながらも、沖縄への「基地の押し付け」を是認する姿勢が浮かび上がった。

 琉球新報社と毎日新聞社が実施したインターネット調査で、米軍普天間飛行場の移設計画を巡る県民調査は、「移設せずに撤去」や、県外・国外移設を求めるなど、名護市辺野古新基地建設に反対する意見は54%にとどまった。

 2014年に辺野古新基地建設に反対する翁長雄志県政が誕生して以降、反対の民意は大きなうねりとなり、「オール沖縄」勢力として各種選挙でも連勝を重ねた。一方、政府は民意を一顧だにせず、17年に名護市沿岸部への護岸工事に着手し、強行的に基地建設を進めている。こうした中、オール沖縄は、支えてきた企業グループが離脱し、革新色が強まった。結果的に県民運動としての「新基地建設反対」という意識は弱まり、県民意識の変化にもつながったとみられる。

 インターネット調査により、回答者の7割以上が50代以下で、新基地建設反対の意見が前回よりも大幅に下回った一因となった。ただ、裏を返せば、新基地建設反対の意見は、若者層や働き盛り世代での浸透に課題があることが浮き彫りとなった形だ。

 沖縄に在日米軍専用施設の7割が集中していることに県民の61%が「不平等」と回答したが、全国調査では40%にとどまった。さらに、住んでいる地域へ米軍基地が移設することも過半数が「反対」と答えた。

 基地の集中に対する沖縄と「本土」の「温度差」の背景には、米軍基地があるが故の事件・事故、日常的な騒音被害など、生活に密接した基地被害への想像力や実感力の欠如がある。自身の地域へ米軍基地の移設を反対している状況は、日米安保を担保するための装置として、沖縄への基地集中を是認した形とも言える。

 県民の大多数が「不平等」と感じる基地の過重負担を、どう「本土」側に理解させるのか。玉城県政にも継続的な取り組みが求められている。

(池田哲平)