復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月11日「キャンプ・ハンセン、自衛隊の演習場に」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月11日の琉球新報1面のトップは、「防衛庁、期限切れは〝延長〟/強制収用の軍用地/地位協定適用〝接収〟に強硬姿勢」との見出しで、復帰後に強制使用期限が切れた軍用地の取り扱いについて、日本政府として、日米地位協定に基づいて米軍に6カ月間の強制使用権を米軍に認める「米軍土地使用特別措置法」を適用して強制使用を延長する考えであることが大きく伝えられている。衆院内閣委員会で上原康助衆院議員の質問に島田防衛施設庁長官が答弁している。記事中では「沖縄は軍・公用地暫定使用法で、本土にはない法律を適用されたうえ、その効力が消えると、こんどは〝本土並み〟ということで本土法の適用という二重のカセをかされることになる」と沖縄に対する日本政府の施策姿勢を指摘している。

 隣接の記事には「自衛隊の演習場に/キャンプハンセン基地/米軍と共同使用」との見出しで、キャンプ・ハンセンの一部を共同使用して自衛隊の実弾演習射撃場として使用する防防衛庁の鶴崎施設担当参事官の答弁として「自衛隊の実弾演習場については、自衛隊のための新しい演習場をつくる考えはないが、米軍の演習場を共同使用していきたいと考えており、キャンプ・ハンセンの一部などについて共同使用するのではなかろうかと考えている」と紹介している。

 さらに復帰に伴う米軍の施設の行方に関して「スパイ学校を撤去/心理作戦部隊は存続」との見出しで、返還協定調印時に米軍がキャンプ瑞慶覧にある「米陸軍太平洋情報学校を撤去する」と約束していたことを受けて米陸軍が14日付で廃校にすると発表したことを伝えている。米陸軍太平洋情報学校について記事では「〝スパイ学校〟と呼ばれ米国太平洋陸軍司令部管轄下の一機関で十三年前に沖縄に設置された。その期間中、アジアの十六カ国から四千六百人以上の学生を訓練した(在沖米軍発表)といわれる。在校する学生や将校は一~二週間の基礎と幹部情報訓練コースを受け、対ゲリラのかく乱戦法やスパイ活動などを徹底的に教育していた」と説明している。

 別の記事では、石川市にあった伊波城ホテルについて「米軍提供で合意/3演習場返還と引き替え」との見出しで、川田・瀬嵩・前島の3演習場の返還との引き替えを取り引きした格好だと伝えている。

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。