【識者談話】復帰の功罪が顕在化 星野英一・琉球大名誉教授<世論調査を解く>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
星野 英一氏

 沖縄の日本復帰50年の節目を前に、琉球新報社と毎日新聞社が合同で実施した世論調査で、復帰や基地問題への評価に県内と全国で違いが出た。識者に見解を聞いた。

   ◇   ◇

 2012年の前回調査と比較すると「時間の経過」が結果にも表れていると感じる。復帰して良かったこと、悪かったことを問う設問で、各項目の順位変動は少ないが、パーセンテージはそれぞれ上がっている。復帰して50年がたち、県民の中で功罪が顕在化してきている。

 辺野古新基地建設を巡っても否定意見が減って肯定意見が増えた。政府が工事を強行する中で、選挙や県民投票、裁判で中止を訴えても止まらない状況がある。県民の中で「無力感」が漂っていることも一因だろう。

 国の「アメとムチ」政策の下、県民が正義や大義を重視する選択には勢いや「風」が必要となる。基地建設阻止に向けた「オール沖縄」の誕生は、過去の県政や政府の基地建設容認・推進で「尊厳が踏みにじられた」と感じた県民の思いに支えられた。そうした勢いを数年にわたって持続するのは難しい。

 沖縄への米軍基地集中を巡る全国と県民の意識差は、全国の人が基地被害を想像できないことが要因の一つだ。全国の人々も、日米安保体制で沖縄に基地負担を押しつけている構図は理解している。それを認めたくないがために、地政学やNIMBY(わが家の裏庭ではやらないで)の議論が展開される。

 米軍の存在が見えていない人たちは、日米安保で戦争に巻き込まれるリスクを過小評価する。巻き込まれても自分は犠牲にならず、誰かの負担で「安全」が保障されるのであれば、現状を肯定する声も出てくる。全国と沖縄の関係のみならず、自衛隊配備を巡る沖縄本島と先島の関係にもあてはまりうる。

 世代間の認識の違いもある。若い人は米統治下で人々が自治を獲得してきた歴史や、人権の侵害に意識が向きにくい。沖縄戦に比べて、学校で学ぶ機会も少ないだろう。無論、知らない若い人が悪いのではなく、教えてこなかった大人たちの責任といえる。
 (琉球大名誉教授、国際関係学)