<Life・共生>おきなわふくしオンブズマン 利用者の声 施設へ 改善提言「その人らしさを」


この記事を書いた人 外間 聡子
豊見城市の「ゲラジョブセンター」を訪問し、利用者の女性(左)と面談するふくしオンブズマンの金城節子さん=8月31日、豊見城市高嶺

 社会福祉士や元教員、障がい当事者ら有志でつくる「おきなわふくしオンブズマン」が十数年来、福祉施設の利用者に寄り添う草の根の活動を続けている。障がい者や高齢者関連の施設を定期訪問し、利用者の要望や思いを聞いて施設側に伝え、課題の改善を働き掛けていく。オンブズマンは、積極的な聞き取りや苦情の解決にとどまらず、その人らしさを発揮できる環境づくりを一緒に考える。現行の制度では、十分にカバーできない役割を担っている。

◆現行制度の課題

 現行制度で福祉サービスの提供事業所は、利用者からの苦情解決に向けて、客観性を確保するため「第三者委員」の設置が求められている。施設外の第三者に声を届けられる仕組みにはなっているものの、形骸化が指摘されている。

 県社会福祉協議会によると、県内では多くの事業所がポスター掲示による「第三者委員」の周知にとどまり、委員を積極的に紹介してはいない。県社協は「本業と兼務で務めている委員もいるので、頻繁には声を掛けづらいのではないか」と見る。

 オンブズマンの一員として活動する沖縄大学の島村聡准教授(社会福祉士)は「施設が第三者委員を指名する仕組みになっているため、(施設の)評議員や理事、経営者の身内が担っている場合が多い。利用者は苦情を言えない雰囲気がある」と課題を挙げる。

◆気持ちを代弁

 オンブズマンは利用者の立場に立って権利を守るための活動を展開する。8月31日、オンブズマンの玉寄修さんと金城節子さんが、障がい者の就労移行支援・就労継続支援B型事業所「ゲラジョブセンター」=豊見城市=を訪ねた。オンブズマンが契約を結んでいる7事業所の一つだ。

 玉寄さんは聴覚に障がいのある男性と、脳梗塞の後遺症で肢体が不自由な男性と面談した。いずれも50代だ。耳の不自由な男性は普段、筆談で思いを伝えている。玉寄さんからの質問に筆談で答えるものの、意味が伝わらない部分があった。面談後、玉寄さんは職員に「手話の方が思いを表現できると思う。手話サークルに来てもらって、本人の思いをくみ取る作業をした方がいい」と提案した。

 金城さんは精神遅滞のある19歳の女性に寄り添った。「腹痛を訴え休むことがある」という支援員の懸念を踏まえ、家庭での過ごし方を尋ねた。面談後、金城さんは「慕っている兄が腰痛を発症し心配している。家族同士の大きな声での会話が気になり眠れないことがあるようだ」と女性の心配事を代弁した。

 オンブズマンは利用者の思いを口頭や文書などで施設側に伝え、改善状況など経過も確認する。外部の視点は支援員に変化をもたらしている。

 職業指導員の新垣敏美さんは「私たちが日ごろ気付かない点を指摘してもらい、新しい発見がある」、支援員の田中邦俊さんは「利用者の普段と違う面が見えるのでいい。オンブズマンの報告を職員で回覧し共有している」と話していた。(高江洲洋子)

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養成研修の受講生募集/オンブズマン/19、20日 那覇で開催

 おきなわふくしオンブズマンは、2015年度の「オンブズマン養成研修」の受講生を募集している。研修は19日から2日間、那覇市IT創造館で開催。終了後は約3カ月間の実習をへて、オンブズマンとして月1回の施設訪問と、毎月第3日曜日の委員会出席などの活動を行う。

 福祉関係の資格の有無を問わず受講ができ、費用は無料。研修では権利擁護の基本的な考え方や障害者虐待防止法、障がい者の特性や生活課題などを学ぶ。

 受講希望者は、住所、氏名、メールアドレス、電話番号を記載して送信すれば手続きができる。連絡先アドレスはshimamura@okinawa-u.ac.jp 当日の問い合わせは島村さん(電話)090(1948)6677。