「沖縄に寄り添う姿勢引用」新振興計画に50年前の政府声明を盛り込んだ理由


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「県民に寄り添う姿勢を示した政府声明を沖縄振興計画に盛り込みたかった」と語る武村幹夫特命推進課長=12日、県庁

 昨年6月に公表された第6次沖縄振興計画(振計)の「素案」段階では、政府声明の一文は盛り込まれていなかった。武村幹夫特命推進課長は素案公表後、「沖縄を平和の島」とし「アジア大平洋地域の文化交流の舞台」にすることを願った政府声明の存在を振計の策定に携わった有識者から紹介された。「復帰当時の政府が県民に寄り添う姿勢を示し、50年後の沖縄振興の方向性にも通じる文だ」と感じて引用することを決めた。

 昨年10月の県振興審議会の中間取りまとめ案から振計の「計画策定の意義」の冒頭に盛り込んだ。審議会委員や県庁内部からも異論は出なかった。

 国の今後10年間の沖縄振興基本方針では離島の安全保障上での役割について触れており、沖縄振興の意義付けが変質しつつある。さらにロシアによるウクライナ侵攻を契機として、台湾有事に備えて南西諸島の軍事力強化を唱える声も高まる状況の中、50年前の日本政府の全閣僚の了解の下、「沖縄を平和の島」とするとした政府声明の存在感は高まりつつある。

 県が作成し、10日に岸田文雄首相に手交した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」でも「沖縄を平和の島」とする理念が前面に打ち出された。建議書を岸田首相に手交した玉城デニー知事は「政府は復帰の時に沖縄県と政府が共有した『沖縄を平和の島』とする目標などが着実に実現されるよう取り組んでほしい」と求めた。

 武村氏は、政府声明は第6次振計の基調となる自然や文化といった沖縄の「ソフトパワー」の観点からも重みを増していると感じている。「平和はソフトパワーの象徴だ。沖縄は古来、アジアの国々との交易により栄えた。軍事力を指す『ハードパワー』を高める方向ではなく、沖縄の強みは今も昔もソフトパワーだと思う」と語った。
 (梅田正覚)