アジア各国との懸け橋に 玉城知事が基調講演 復帰50年新報・毎日シンポジウム


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米国統治下にあった沖縄が日本に復帰して15日で50年となるのを記念したシンポジウム「沖縄復帰50年を問い直す」(毎日新聞社、琉球新報社、一般社団法人アジア調査会共催、BS―TBS後援)が4月28日、東京都内で開かれた。玉城デニー知事、琉球新報の松元剛編集局長、BS―TBS「報道1930」の松原耕二キャスターが基調講演した。玉城知事は、復帰後の沖縄の歩みと、米軍基地の負担の重さを説明。「基地は県経済の発展を阻害している」と主張した。パネルディスカッションでは、玉城知事が五百旗頭真アジア調査会会長、沖縄持続的研究所の真喜屋美樹所長、宮城大蔵上智大教授と議論した。五百旗頭会長は「日米地位協定の改定は、首相が米国大統領に直談判したら可能だ」と述べた。(本文敬称略)【司会は前田浩智・毎日新聞主筆】

玉城デニー知事

 沖縄は日本本土に復帰後、目覚ましい発展を遂げた。人口は復帰当時から1.5倍となり、社会インフラの整備も進んだ。県民総所得は名目上で1972年度の5千億円から、2018年度には4兆7千億円と約10倍に増加した。

 だが、米軍基地は沖縄経済をフリーズ(凍結)させている要因だ。沖縄の経済的発展を目指す上でも、米軍基地のさらなる整理縮小は当然だ。

 復帰50年がたっても、県民が最も望んでいた「基地のない平和な沖縄」はいまだ実現されていない。米軍専用施設の面積は全国の70.3%が沖縄に集中し、沖縄本島の面積の14.6%を占める。米軍人・軍属による犯罪、訓練や演習に伴う事故、日常的な航空機騒音による健康被害など現在でもさまざまな問題が発生している。

 復帰50年という長い時間が経過しても、基地が県民の安全安心を脅かす状況は変わっていない。この状況を変えていきたい。取り組むべき課題には、日米地位協定の抜本的な見直しも含まれる。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設について、沖縄県は反対を続けている。19年2月の県民投票で投票総数の71.7%が「埋め立て反対」と明確に示されたが、日米両政府は「辺野古移設が唯一の解決策」との姿勢を変えず、県民の思いを顧みることなく工事が強行されている。辺野古移設では普天間飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらない。

 中国の軍事力強化、台湾海峡を巡る緊張、ロシアのウクライナ侵攻など、日米安全保障体制の必要性や日本の安保環境が厳しさを増していることは十分に理解している。それでもなお、米軍基地負担の沖縄への集中は異常だと言わなければならない。

 沖縄は地理的特性を生かして、琉球王国の時代からアジア各地と交流し、国々との懸け橋となることを目指してきた。米中の対立が続き、台湾海峡の緊張が注目される現在、緊張緩和や信頼醸成は待ったなしで取り組むべき喫緊の課題であり、その積極的な役割を担いたい。アジア太平洋地域の安保環境を改善することで在沖米軍基地の整理縮小が可能な環境を作り出し、沖縄がさらに発展し、地域全体の安定や発展にも貢献し、日本経済にも寄与する好循環をつくる。これが我々が目指す道だ。



<登壇者略歴>

沖縄県知事 玉城デニー氏

 たまき・でにー 1959年沖縄県生まれ。沖縄市議を経て、2009年から衆院議員を4期務め18年10月から現職。

アジア調査会会長 五百旗頭真氏

 いおきべ・まこと 1943年生まれ。神戸大教授、防衛大学校長などを経て、兵庫県立大理事長。2020年6月から宮内庁参与。

沖縄持続的発展研究所所長 真喜屋美樹氏

 まきや・みき 1968年沖縄県生まれ。元普天間飛行場跡地利用検討委員会委員。名桜大准教授を経て現職。

上智大教授 宮城大蔵氏

 みやぎ・たいぞう 1968年生まれ。NHK記者として沖縄放送局に勤務。政策研究大学院大助教授などを経て現職。