復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月14日「『沖縄県』あすスタート」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。  

 1972年5月14日の琉球新報1面のトップは、「『沖縄県』あすスタート/混乱と不安のウズ/復帰『祝賀』『抗議』で二分」との見出しで、15日に復帰する日を控えた沖縄の空気を伝えている。記事中では「名実ともに『沖縄県』としての形をととのえる。しかし、一ドル対三〇五円での通貨交換レートの決定による県民の不安は高まり、嘉手納基地を中心とした米軍基地はベトナム戦の激化をひしひしと実感させるあわただしさの中に、祖国復帰を迎えようとしている。(中略)一般市民は、復帰と同時に行われるドルと円の交換レートに不満をみせ、〝最後の買い物〟にあわただしく『晴れて日本国民』という実感の声はほとんど聞かれない」と県民の受け止めを記している。

 隣の記事では「新たな決意の日/復帰協 あす、大規模な抗議集会」との見出しで、政府主催の記念式典とは別に復帰の在り方に抗議する大規模集会を予定していることを伝えている。

 復帰後の米軍基地の在り方に関して「87施設・区域を提供/軍用地建て物/持ち回り閣議で最終決定」との見出しで伝えている。復帰後に米軍に提供する軍用地と建物については石川市の「伊波城観光ホテル」を追加したことで最終的に87施設・区域の提供を決めたという。

 「金融機関は『引き出し』増/預金高十一億ドルの大台」との見出しは、大蔵省が発表した金融機関の資金残高を掲載している。通貨交換に備えて、投棄ドルの有無に関する資料ともするために発表した。

 通貨交換レートが県民の求めるものより下回った305円となったことについて、山中貞則総務庁長官の「県民に申し訳ない」と語った記事も掲載している。

 また「〝尖閣〟は日本領土/政府、沖縄返還控え打ち出す」との見出しで、外務省が尖閣列島領有に関する主張の根拠など歴史的な経緯をまとめて発表したことも紹介している。

 

 

 

 

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。