復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月17日「首相、沖縄の物価対策検討/戦闘作戦行動基地にせぬ」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月17日の琉球新報1面は、「健康保険、現物給付制スタート/開業医来週から実施/農漁民などは遅れそう」との見出しで、日本の健康保険法の適用に伴い、被保険者は医療費5割を負担する制度が始まることを伝えている。記事の冒頭は「二百円で医者にかかれるようになる―」と書き出している。

 国会の衆院内閣委員会では佐藤栄作首相が出席し、復帰後初となる沖縄や在沖米軍基地についての答弁を記している。「首相、沖縄の物価対策検討/戦闘作戦行動基地にせぬ」との見出しで「佐藤首相は①通貨交換後の物価値上がりなど山中総務長官の帰任を待って、政府としてとるべき措置があれば検討したい②沖縄を含め、日本の基地をベトナム戦争のため戦闘作戦行動基地化にはさせない③KC135給油機の活動は事前協議の対象としない④事前協議については日米随時協議で、不安のないよう詰める―などの点を説明した」と書いている。

 米軍基地に関連して隣には「在日米軍に組み入れ/西太平洋への兵たん支援」との見出しの記事も掲載している。

 さらには別の記事では「核撤去の確証ない/森氏/外相、政府はきわめて満足」との見出しで、参院外務委員会で社会党の森元治郎氏が沖縄からの核兵器撤去の米国務長官書簡について「核兵器を撤去したという明確な表現が」ないと政府をただす様子を紹介している。これに対し福田赳夫外相は「日本政府としても明確な表現を希望したが、核は米国の最高の戦略機密であり、実現しなかった。しかし大統領の指示と許可のもとに、米国の確約が完全に履行された、との表現は明確に核が沖縄から撤去されたことを示した者と受け取っている」と答弁したことを伝えている。

 米軍の動きに関連して「米軍、大規模な実弾射撃/北富士演習場」との見出しで、本土での米軍による実弾訓練の様子を紹介している。記事では「北富士演習場でことし十三回目の米軍実弾演習が十六日から二日間の日程で始まった。この日の演習は一五五ミリ砲など十五門、海兵隊員三百九十人を配置した最近にない大規模なもの」と、米海兵隊による155ミリ砲の実弾演習が本土で実施されていることを伝えている。

 復帰に伴う通貨交換に関して「初日は三千三百万ドル/通貨交換、予想より好調」と日銀那覇支店による発表内容を記事にしている。さらに「行政処分の公務員〝復権〟/沖縄恩赦、近く閣議決定」との見出しで、日本政府が沖縄復帰記念恩赦を沖縄の公務員だけに限定することにしたとの方針を伝えている。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。