復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月19日「事前協議制洗い直す」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月19日の琉球新報1面は、「独禁法違反の疑い濃い/公取委、物価高騰で指導へ/業者を個別に呼び/県企画部も実態調査」との見出しで、通貨交換の混乱に乗じた不当値上げが横行して異常な物価上昇が起きている沖縄の現状に対して公取委が行政指導に乗り出す方針を紹介している。記事では「清涼飲料水、パン、豚肉、とうふ、クリーニング、理容、美容など軒並みに組合内で協定し不当な価格、料金を一般消費者、利用者に押し付けている」実態を婦人団体協議会が指摘していることも紹介している。

 隣接した関連記事で「総力あげ物価対策/那覇で初の抜き打ち調査/県企画部」と沖縄県企画部も物価正常化に那覇市内のデパートや市場で抜き打ち調査したとの記事も掲載している。

 さらには物価値上げに対して沖縄県労協の幹事会が開かれ「不買運動展開へ/消費者協同運動興し自衛」と、春闘と物価値上げ反対運動を連動させた運動方針を決めたことを紹介している。

 「事前協議制洗い直す/首相答弁、現状に合った基準を」との見出しで、復帰前から形骸化が指摘され問題になっている、日本からの戦闘作戦行動や装備・配置の重要な変更などがある場合に課せられている日米間の事前協議制について佐藤栄作首相が洗い直す考えを示したことを伝えている。佐藤首相は「事前協議制は洗い直さないと空どう(洞)化の心配がある。事前協議制を作ったときの情勢とよほど変わっており、戦闘作戦行動や装備、配置の重要な変更など今日の情勢に合うような基準が必要だ」と述べたという。さらに関連記事で佐藤首相は同じ参院内閣委員会で、自衛隊と朝鮮半島の関係に触れ「韓国で事変が起きても、これを直ちに日本への直接の侵略とは考えないが、その恐れはある。このため事前協議の話が出ればそういう自体に備えて措置を取るのは当然だ」と述べている。

 琉球銀行の崎浜秀英頭取の日銀本店での会見を伝える記事では「二、三年後に三行合併/今後景気加熱の心配も」との見出しで掲載している。崎浜頭取は、本土の都市銀行や地銀が支店を出店してくることを見越して、沖縄県内の琉銀と沖銀、沖縄相互銀行の3行が普通銀行1行に集約されることになるだろうとの見通しを語ったと伝えている。

 復帰して開催され沖縄県知事選など県内選挙を見越した動きとして「本土政党/沖縄選挙に関心/告示後次々派遣へ」との見出しで本土の政党の動きを伝えている。記事では「いまのところ党首や党役員をただちに派遣する動きはないが、今月末の選挙告示には、大物を続々くり出す。その間、事務局を中心に票固めを進める」と紹介している。

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。