オーバーツーリズム再燃に備え 沖縄が北海道に学ぶ観光との両立 ゴミや排ガス…住民生活に影響も


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「青い池」を視察する沖縄の観光事業者ら=11日、北海道美瑛町

 観光客の著しい増加に伴い、地域住民の生活や自然環境、景観などに悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」。2019年には年間入域観光客数が1千万人を突破し、離島を中心に交通渋滞やスーパーなど生活インフラの逼迫が問題となった。新型コロナの影響で観光客が急減したため沈静化しているが、21年に本島北部や西表島の自然が世界自然遺産に登録されたことなどで、コロナ禍の収束後には観光客の増加が見込まれ、オーバーツーリズムの再燃が懸念される。

 10日~13日まで行われたJTB協定旅館ホテル連盟沖縄支部連合会とJTBレキオス会主催の交流事業の中で、沖縄の観光事業者ら視察団が北海道美瑛町を訪れた。美瑛町は人口1万人ほどで、大部分の住民が専業農家。12年に「青い池」がアップルの壁紙に採用されたことで人気が急上昇した。外国人観光客を含め19年は年間約242万人もの観光客が訪れた。活性化する一方、観光客のゴミや車の排ガスなどで、地域住民の生活が脅かされた。

 観光客の意識啓発

 解決に向けて観光地域づくり法人(DMO)の「丘のまちびえいDMO」が発足。生活と観光の両立を図っている。「美瑛観光ルールマナー110番」は、農家の畑や私有地など立ち入り禁止区域に観光客が入ると、目撃者がDMOに連絡し、職員によるパトロールの強化や新しい看板設置の参考にする。

 観光客の意識啓発にも力を入れる。地元農家と協力し、ガイドとともに畑で収穫体験ができるツアーでは、雑菌や害虫の卵などがついている恐れがある靴で畑に立ち入るリスクなど、気が付かないうちに違反してしまいがちな観光マナーも学べる。多くの観光客が利用する旭川空港では、観光マナーを啓発する動画を流している。同DMOの泉剛生事務局次長は「美瑛町は北海道の中央に位置し四方八方からの入域があり、全ての観光客に情報が伝わりづらい」と課題を示した。沖縄での意識啓発については「沖縄は玄関口が空港や港など限られているのでそこでマナー喚起を呼び掛ければ大いに効果が得られるだろう」と話した。

 持続可能な観光へ

 深刻な打撃を受けている沖縄観光は、コロナ禍からの回復と同時に持続可能な観光の在り方を模索している。美瑛町の視察に参加したシェラトン沖縄サンマリーナリゾートの徳田勇人氏は「沖縄のDMOも学ぶところがある。資源をどう活かすかが重要で、地元の方と折り合いをつける対策が求められている」と話した。

 JTB沖縄の杉本健次社長は「県全体で入域を制限する必要はない。観光地を開設する場所とそうでない場所とを分けることで、住民の生活を保護する必要がある」と指摘した。
 (與那覇智早)