ストレリチア「再び」鮮やか 立ち枯れ被害から回復 原因究明し生産増 JA、南部地区


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「県産は5~10月が生産・出荷のピーク。「高品質のストレリチアを全国に届けたい」と話す金城亮一さん(左)と島袋幸光さん=糸満市大里

 鮮やかなオレンジ色の花を咲かせ、高級切り花として全国で流通しているストレリチア。沖縄は、この“極楽鳥花”とも呼ばれる花の生産量日本一で、特に南風原町を中心に本島南部地区は県全体の9割を占める一大産地だ。一時は疫病菌による深刻な立ち枯れ被害で生産量が激減したものの、近年は原因究明が進み予防対策も浸透してきたことから生産量はV字回復を見せている。

 ストレリチアは南アフリカ原産。一度植え付けたら長年収穫できる永年作物で、県内では1980年頃から盛んに生産されている。エキゾチックで存在感のある見た目から、冠婚葬祭をはじめ幅広く活用されている。

 良好な採算性と作業性、強い耐久性などの理由から農家に人気のある品目だが、以前から疫病菌による土壌病害で起こる立ち枯れが課題だった。特に近年は異常気象による豪雨や台風の影響で被害がまん延し、生産量、収穫面積は年々減少していた。2016年度の出荷量は88万3千本で出荷総額は7537万円だったが、20年度は新型コロナ禍による需要減もあり48万本、4093万円まで落ち込んだ。

 生産地の存続が危ぶまれる中、JAおきなわ南部地区営農振興センター花卉指導課の金城亮一さん(35)を中心に、JAや農家が一体となり南部地区の農地調査を強化。金城さんらは自らストレリチアの栽培試験を実施したほか、実証用の農地を設置し農薬散布の条件などを研究することで、立ち枯れの原因を(1)有機肥料などの大量施用による疫病菌の増加(2)台風による暴風の影響(3)農地の排水不良―だと突き止めた。

 その後も立ち枯れ対策と研究は続けられ、21年度の生産量は50万6千本に回復。22年度も順調で、生産量は前年度を上回る見込みだという。

 金城さんは立ち枯れ問題が改善され、作付希望者と作付面積が急増していると説明し「今後は販売力強化と栽培技術の普及に取り組み、農家の所得向上につなげたい」と意気込んだ。

 優良農家の一人、島袋幸光さん(52)=糸満市=は研修や勉強会を通して肥培管理の大切さを学んだといい、「適正環境でしっかり育て、『輝かしい未来』という花言葉通り、県産ストレリチアの魅力を広く発信したい」と述べた。(当銘千絵)