復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月22日「沖縄物価急騰、きょう緊急会議」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月22日の琉球新報1面は、「米大統領きょうモスクワ入り/協調ムード欧歌か/基調に大国主義的論理」との見出しで、米国の元首として初めてソ連を訪問するニクソン米大統領の様子を紹介している。記事では「両超国の話し合いは単に二国間関係にとどまらず、国際情勢全般に多大な影響を及ぼすであろうことは想像にかたくない。欧州問題ではドイツがようやくソ連、ポーランドとの条約を批准したことによって、ソ連が念願とする全欧安保会議開始の見通しがきわめて明るくなってきた」との見通しも示している。

 一方で「しかし、現在の緊急問題であるインドシナ、中東問題に関しては両国の主張は平行線をたどっており、これに関して具体的な成果なり解決策が打ち出されることはまず期待できない。しかしベトナムについては、米国がニクソン大統領のソ連滞在中、北爆あるいはハイフォン港封鎖などを中止または緩和するかどうかが注目されている」と、ベトナム戦争への影響にも触れている。

 関連して、ニクソン米大統領のソ連訪問中にソ連側のスポークスマンをつとめるタス通信社長の会見の様子を伝える記事で「元首として出迎え/米大統領日程を発表」との見出しで紹介している。

 復帰に伴って物価が急騰している沖縄で「きょう緊急会議/各省庁の物価担当官集め」と日本政府の対応を紹介している。記事では「特にこの会議では『なぜ物価が上昇したか』という原因究明に重点をおくが(中略)ランチョン・ミート(10%以上も値上がり)、島内産のみそ(約9%)、しょう油(19%)、とうふ(約6%)など360円に換算したもの以上に値上がりしていることを政府は重視、『なかには業界の談合値上げもあるのではないか』とみている」と記している。

 復帰に伴う措置としては「きょうから支払い/現金の差損保証金」との見出しで、通貨交換で生じた現金と通貨性資産の損失保証金について支払いが始まることを伝えている。

 1972年1月に福田赳夫外相とロジャーズ国務長官とで合意された関東地方の米空軍施設の整理統合計画に関して「移転経費で本格的話し合い/関東地方米空軍の横田集約」との見出しで、防衛施設庁と在日米空軍との間で交渉が進められていることを伝えている。

 

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。