復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月23日「自衛隊沖縄入り/復帰後、初」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月23日の琉球新報1面は、「協定値上げの排除、指導へ/公取委、係官を派遣 ニラミ/沖縄物価会議/輸入物資もふやす/生鮮食品、本土から供給/あす具体的対策検討」との見出しで、復帰に伴う物価高騰への対策を強化する政府方針を伝えている。記事では、山中貞則沖縄開発庁長官が挙げた物価上昇の三つの要因を「①ドル切り替えレート305円に対する心情的不安があること。このため買いだめや異常な値上がりをきたした②賃金の360円保証により、それとの見合いで値上がりしたこと③本土政府のとった各種特例措置が県民の末端まで浸透していなかったこと」を紹介し、それらに対する対策の検討の様子を伝えている。

 物価高に関連した記事として「高い物価が争点/知事・県議選/自民、革新の動き活発」との見出しで、選挙でも最大の争点となっていることを紹介している。「復帰後の物価の値上がりについては、すでに台所を預かる主婦を中心にして、強い批判が出ており、抗議大会を準備するなど活発な動きを展開しているが、各政党は、これに呼応して、二十六日の県会全体会議で具体的な対策を講じるとしている。しかし、現在、活発に行われている地域懇談階では、この物価についての質問が集中し必然的に選挙の最大の争点として浮かび上がってきている」と記事に記している。

 日々の暮らしに関係する問題として、民間の調査機関の経済見通しとして「1ドル-296円に/4%の円再切り上げ/国民経済研究協の予測」との見出しで、「47年度下期には輸入の拡大政策を実施するか、円レートを再調整するか、という政策選択の岐路に立たされ、結局、小幅な円レート再切り上げを選択する可能性は否定出来ない」との見通しを示している。

 復帰前から徐々に沖縄配備を進めていた自衛隊で、復帰後に初めて配備される部隊が到着したことを伝える記事を「自衛隊、沖縄入り/復帰後、初めての33人」との見出しで報じている。自衛隊配置に反対するデモ隊が那覇空港のゲートに押しかけたが「機動隊に制されてトラブルはなかった」という。

 このほか、ニクソン米大統領の初ソ連訪問で「米大統領、モスクワに第一歩/ポ議長らが出迎え/きょう第1回目の会談」との記事も掲載している。

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。