【識者談話】問題の深刻さを見つめ直す契機に ハンセン病協議会設置へ(森川恭剛・琉大教授)


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森川 恭剛教授

 協議会が設置されればハンセン病の当事者が抱える問題が俎上(そじょう)に上がり、議論されることになる。ハンセン病問題の深刻さを見つめ直す契機になる。

 1996年、らい予防法が廃止され、2001年に熊本地裁が国の隔離政策を違憲だと判断してから20年が経った。簡単に治る病気で差別をする理由は何もないので、かえって、ハンセン病問題は「過去の問題」と社会的に見なされがちだ。その中で、当事者が抱えている問題が見向きもされなくなっているのが問題だ。当事者のニーズを把握できていない。

 新型コロナウイルスでも感染者に対する差別が表れた。そういうものを見たハンセン病当事者は感染症に対する差別がなくなったとは思えない。

 いつでも差別されかねない状況は変わっていない。退所者が安心して地域の医療機関を受けられる環境をつくるため、関係者が問題を理解して労力を傾ける必要がある。

 リーフレットの見直しが行われることも、ゆっくりではあるが前進だ。だが、いくら良い資料ができても、学校に配布されて終わりで、先生が使い方が分からなかったり、生徒が読まないといった問題がある。リーフレットの使われ方も、議論されるべきだ。
 (ハンセン病問題)