〈108〉老化促進するCKD 適切量のタンパク摂取を


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 最近の高齢者は若返りながら長生きできるようになっていることをご存知でしょうか。日本人高齢者に関する研究では1992年の高齢者よりも2002年の高齢者は体力的に約10歳若返っているそうです。

 また、気持ちの若返りも見られていて、「高齢者」とされる65歳を超えても「おばあさん」ではなく「おばさん」を自認する女性が増えているようです。一方このようなアンチエイジング(抗老化)に腎臓が大きく関わっていることは意外と知られていません。腎臓のはたらきが低下すると血管や骨、筋力が弱くなり、皮膚の萎縮もみられます。これがいわゆる老化です。

 最近、成人の8人に1人にあるといわれているCKD(慢性腎臓病)が注目されています。その多くは高血圧、糖尿病、加齢と密接な関連があり、超高齢社会を反映してさらに増加することが予想されています。

 今回はCKDの食事療法の中のタンパク質制限について述べます。タンパク質を制限する理由は、タンパク質を過度に摂るとその燃えカスが弱った腎臓を痛めるからです。タンパク質制限は腎機能障害の程度が比較的軽い場合や若年者に対して有効と言われています。

 しかし、CKDの割合が多い高齢者ではタンパク質を減らしすぎると筋肉量が減って体力が低下し、感染症にもかかりやすくなり逆効果になることがあります。

 もともと高齢者はタンパク質摂取が多くないので、タンパク質を減らすのではなく、むしろ適切な量のタンパク質をきちんと摂ることが重要です。大豆(納豆や豆腐など)のような植物性タンパク質が勧められており、動物性タンパク質では魚や鶏肉が良いと言われています。

 高齢者では歩行速度が低下したり、痩せたりして体力が落ちたという方が増えています。このような状態をフレイル(虚弱)といいますが、フレイル予防には適切なタンパク質摂取と筋トレが必要です。「人生100年時代」と言われており、活発に過ごせる時間は延びています。若々しく高齢期を過ごすためにCKDのチェックと適切な食事療法、運動療法を実践してみてはいかがでしょうか。

(宮良忠、みやら内科クリニック 内科)