復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉5月25 日「適正価格にひき戻す」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」直後の1972年5月25日の琉球新報1面は、「適正価格にひき戻す/政府、物価安定で緊急対策実施へ/物資供給の円滑化を図る/各品目、業種を調査」との見出しで、復帰後に沖縄で起こっている物価高騰に対処する政府の対策について伝えている。さらに関連記事として「モニター15人配置/公取委、物価監視を強化」と、公正取引委員会が沖縄事務局の事務員を増員するとともに物価監視のモニターを配置する対策も紹介している。

 復帰に伴う課題に関連しては、参院沖縄・北方特別委員会の審議の様子を紹介する記事は「土地買い占めはチェック」との見出しを掲げる。記事中で「買い占めは、今後の海洋博や沖縄の経済開発にも支障となる。企業などの思惑買いは税制などでチェックするとともに、米軍基地の縮小を真剣に考えたい」「米人犯罪が続発しているのは遺憾なことで関係筋に毅然たる態度で臨むよう支持したい」と玉置沖縄開発庁政務次官の答弁を紹介している。

 「航空39人を派遣/自衛隊配備」との見出しの記事は、復帰後の自衛隊沖縄配備第2弾の人員派遣について伝えている。

 企業の合併について記事もあり「沖縄生命、協栄と合併/大蔵省、認可の方針」との見出しで紹介している。具体的には、沖縄の生保会社の沖縄生命が、本土の協栄生命(東京)と保険業法に基づく業務の包括移転契約を結び、事実上の吸収合併となることを伝えている。記事中では「政府としては、沖縄の本土復帰に伴う本土企業の進出によって沖縄経済に混乱が起こらないように配慮する方針だが、大蔵省では今回の両社の合併によっても琉球生命の事業活動に大きな影響は与えないと判断して認可の意向を固めた」と政府側の考えを解説している。

 そのほか国際情勢に関連しては「『中華人民共和国が正当政府』/佐藤首相、周発言に対応か」と佐藤栄作首相が国会で述べた中国についての見解を伝える記事や、米ソ首脳会談2日目の記事で「宇宙協力条約に調印/戦略兵器制限も合意」との記事も掲載している。

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。